しかし、彼女の名をとどろかせたのは、式典で披露した詩の朗読だった。ゴーマンは18歳だった2017年、全米青年桂冠詩人の第1回受賞者に選ばれている。彼女が式典で朗読したのは、この日のために書き下ろした『The Hill We Climb(私たちが上る丘)』という詩だった。国中がこの若き黒人女性の力強い言葉に釘付けとなった。彼女の言葉は、国内テロに揺るがされ、新型コロナウイルスの流行に襲われ、政治的分断に引き裂かれた米国がこの日、必要としていたものだった。
それは、希望と目標へ向けた決意にあふれたメッセージだった。詩の一部は、暴徒化した米国生まれのテロリストたちが連邦議会議事堂を襲撃・占拠した日に書かれたものだったという事実を知れば、彼女の言葉はより一層意味深く感じられるだろう。
22歳のゴーマンは、大統領就任式で詩を朗読した最年少の詩人となった。過去に同じ場所に立った詩人はロバート・フロスト、マヤ・アンジェロウ、ミラー・ウィリアムズ、エリザベス・アレクサンダー、リチャード・ブランコら、そうそうたる面々だ。
ロサンゼルス出身のゴーマンは、ハーバード大学で社会学を学び、既に自身の著作を出版しており、近々さらに2作を発表する予定だ。彼女の作品に注目して就任式へ招いたのは、ファーストレディになったジル・バイデンだった。
吃音(きつおん)症があったバイデン大統領と同様、ゴーマンも幼少の頃から、特定の音を正しく発音できない言語障害に悩まされてきた。ゴーマンは「自分の障害は弱点だとは思わない」とロサンゼルス・タイムズ紙に語っている。「そのおかげで私は今のパフォーマーになれたのであり、目指しているストーリーテラーにもなれた。音を発する方法を自分で覚え、発音にも特に気を遣わねばならないと、音や聴覚経験に対する意識が高まる」