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2021.01.27

元テスラ社員のバッテリー素材企業「シラ・ナノ」が600億円調達

シラ・ナノテクノロジーズにはダイムラーも出資している(Photo by Thomas Niedermueller/Getty Image)

元テスラのエンジニアらが共同創業したシリコンバレーのバッテリー素材のスタートアップ「シラ・ナノテクノロジーズ(Sila Nanotechnologies)」が1月26日、5億9000万ドル(約610億円)の追加資金を調達し、EV(電気自動車)や家電製品のバッテリー効率を向上させていくと宣言した。

今回のシリーズFラウンドはCoatue Managementが主導し、評価額は推定33億ドル(約3420億円)に上昇したと、カリフォルニア州アラメダ本拠のシラ・ナノは述べている。ダイムラーも出資する同社の累計調達額は約9億3000万ドルとなる。

BMWや日本のTDKのグループ会社であるATL(アンペレックス・テクノロジー・リミテッド)とも提携しているシラ・ナノは、2024年に稼働予定の工場の新設を計画している。同社は、最終的に電気自動車100万台分の需要を満たす、年間100 ギガワット時のバッテリー用の負極材を生産する予定という。

シラ・ナノCEOのジーン・ベルディチェフスキー(Gene Berdichevsky)は、フォーブスの取材に、「今回の資金は新たな工場を稼働させ、生産を開始するためには十分なものだが、100万台のEV向けの需要を満たすためには、さらに追加の資金調達が必要になる」と述べた。

米国のバイデン新政権は、温室効果ガス削減のための広範な取り組みの一環として、電気自動車とバッテリーの生産を促進しようとしている。ガソリンやディーゼル車をEVに置き換える取り組みに加えて、少なくとも50万台のEV用の充電ステーションを、全米に設置する準備を進めている。

シラ・ナノによると、同社のバッテリー素材はより軽く、より安全で、よりエネルギー密度の高い電池を製造することを可能にし、EVの製造コストの引き下げにつながるという。同社のシリコンベースの負極は、リチウムイオン電池に使用されているグラファイトを置き換える素材で、現在の電池に比べてエネルギー効率を20%向上させ、最終的には50%の向上を実現するという。

シラ・ナノは、EV向けの素材の生産に先立ち、フィットネストラッカーやワイヤレスイヤホン、スマートウォッチなどの家電製品向けの生産をスタートさせており、同社のテクノロジーを採用した製品が、今年中に登場すると、CEOのベルディチェフスキーは述べたが、特定の企業名は挙げなかった。
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編集=上田裕資

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