コロナ禍でワーキングマザーの精神的負担が増大

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をめぐっては、ワクチンを開発する科学者たちに世界中の目が注がれている一方で、外出規制や学校閉鎖などさまざまな規制が実施されている。こうした規制は人々の身体的健康を守るためのものだが、生活が変化したことと孤独が、人々の心の健康にとてつもない打撃を与えている。

世界中の国々で、いまも感染者数や死者数が増減を繰り返すなか、感染を防ぐための規制や措置がメンタルヘルスの危機を招いていることが、慈善団体の調査で浮き彫りになった。

心の健康に関する英慈善団体「マインド」の調査で、成人の60%と若者の3分の2以上(68%)が、ロックダウン中に精神状態が悪化したと回答したことが明らかになった。また、孤独を感じているという声も増加している。2020年11月に発表された研究では、育児をしている親の10.5%が、深刻な燃え尽き症候群に陥っていることが明らかになった。この症候群は、慢性的なストレス、子どもとのあいだに心理的な距離があるという感覚、極度の疲労、自分が良い親だと考えられなくなった状態が重なった場合と定義されている。

こうした変化は、単に個人の生活に影響を与えているわけではない。妊婦に対する差別反対を訴えるキャンペーン団体「Pregnant Then Screwed」が実施した調査では、ワーキングマザーの半数以上が、パンデミック中に子育ての負担が増したことで今後のキャリアに悪影響が及んだ、あるいはいずれ悪影響が及ぶだろうと考えていることがわかった。

Pregnant Then Screwedがおよそ3700人を対象に実施した聞き取り調査では、ロックダウン中に育児と仕事の両立に苦労したと回答した人は78%に上る。英国の子育てネットワーク「Mumsnet」による同様の調査でも、パンデミックによってメンタルヘルスにマイナスの影響が及んだという回答が、聞き取り調査をした女性のうち76%に上った。

多くの人が、在宅勤務に慣れるという大きな変化を経験した。しかし、学校や託児施設の閉鎖により、育児をする親の多くは、勤務日が一変することになった。

複数の研究では、パンデミックが性差による家事の格差をいっそう悪化させたことが示された。英市場調査会社「イプソス・モリ」の調査では、2020年の春と秋に実施されたロックダウン中に、ワーキングマザーがメンタルヘルス問題で苦しんだ傾向は、一般集団と比べて45%強かったことが明らかになった。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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