アップルは昨年、iOS14へのアップデートからIDFA(Identifier for Advertisers)の取得をオプトイン方式に変更すると発表した。IDFAはアップル独自の広告識別子で、広告主はこれを使って広告効果を測定したり、デバイスやユーザーをトラッキングしている。アップルは、昨年9月に改訂を2021年初めまで延期すると発表したが、業界関係者の多くは、それが近々実行されると予測している。
新ルールが適用されると、ユーザーのプライバシー保護が強化されるため、フェイスブックやグーグルは広告配信の精度の低下に直面する。相当な数のユーザーがトラッキングされることを許可しない限り、これまでのように閲覧履歴や興味、アクティビティに基づいてパーソナライズされた広告を配信することはできなくなる。
モバイル広告の専門家で、かつて人気のゲームアプリ「アングリーバード(Angry Birds)」のユーザー獲得の責任者を担当したEric Seufertは、20%程度のユーザーがトラッキングを許可すると予測している(フェイスブックは、ユーザーにトラッキングの許可を求めるとしているが、グーグルはまだ対応策を明らかにしていない)。
Seufertによると、トラッキングを拒否する80%のユーザーに対する広告効果は低下するが、コンテキストターゲティングの導入で、ある程度は挽回が可能だという。パーソナライズド・ターゲティングがユーザーの閲覧や行動の履歴に基づいて配信する広告を決めるのに対し、コンテキストターゲティングはユーザーが利用しているアプリや閲覧しているウェブサイトの内容に関連した広告を配信する。
「アップルによるiOSのプライバシー改訂が実施されると、フェイスブックは大きな打撃を受けるだろう。収益へのインパクトを試算したところ、標準シナリオでも2021年の第2四半期に約7%減少し、その後も減収が続くという結果が出た」とSeufertは述べている。
Seufertは、楽観的なシナリオで2%の減収、最悪のシナリオでは14%の減収になると予測し、グーグルもフェイスブックも、ターゲティング広告の効率低下から立ち直ることは困難だと考えている。