──海外ではすでに、FCバルセロナやユベントスでクラブトークンが取り入れられていますが、どのように活用されていますか。
田中:海外では、グッズのデザイン案や選手入場の際に掲げる応援メッセージの案を選ぶ投票に参加できたりします。ちなみに、FCバルセロナでは発売から2時間足らずで130万ドル(約1億4000万円)を売り上げたそうです。
もともとバルセロナには「ソシオ」といって、会費をクラブ運営費にあて、会員には会長や役員選挙の投票権があり、ファンの方と一緒にチームを運営する仕組みがありますが、よりデジタルに特化してファンと新しい企画を作っているのがクラブトークンだと思います。
一方、日本では、まだまだトークンという言葉自体が耳慣れません。今回はトークンを販売するだけではなく、サポーターとつくるスペシャルデーを打ち出すことでカジュアルに受け入れやすくしています。さらに、トークン自体の価値が上がるのではないかという関心もあり、既存のサポーターも楽しみつつ、ファン層を広げていくことにつながると考えています。
フィナンシェ代表取締役の田中隆一
──これまでのサポーターとの関わり方との違いや、クラブトークンならではの魅力は何でしょうか。
加藤:これまでは、ファンサービスの企画やグッズなどはクラブ側が決めて、サポーターの方に買っていただくものでした。でもその一歩手前の「権利」を買っていただくというイメージですかね。例えば、4つのグッズの中から1つを投票で選んでもらうみたいな。ロイヤリティを少し高めていただき、クラブの中に一歩か半歩踏み込んでもらって、みなさんと一緒に推進していけるイメージ。それが、他の商材との違いだと思います。
田中:同じく、物事を決定するプロセスを一緒に楽しむのが、今までにないコミュニティづくりになるのかな、と。
チケット収入約3割減へ 一方、熱い支援も
──コロナ禍でスポーツ観戦がしづらい状況で、チームにはどれくらいの影響が出ていますか。
加藤:観客動員数が3分の1になってます。クラブの収益全体が、見込みとしては約3割減になりそうです。基本的にはチケット収入減の影響で、来場者が少なければグッズや飲食物も売れなくなり、スタジアムでの消費も落ち込みます。さらに広告価値も毀損してしまうので、スポンサーさんの収益も下がるという構造です。
試合数はJリーグで2020年は年間34試合、カップ戦が6試合、計40試合のうち半分はホームでした。昨年は計3試合が減り、ホーム戦は1試合減りました。1試合だけ、無観客試合もありました。
今後の状況も見えないなかで、コロナ禍にどう対応するかを常に考えています。生活様式も変わってきて、もしコロナが収まっても完全にコロナ前の状況には戻らないと思うので、それを踏まえて新しいサービスを考えなくてはいけません。