ビジネス

2021.01.27

コロナ禍で売上3倍 「売れないエシカル」への挑戦状



左) エコファーやフェイクスエードなどの素材と組み合わせてデザインされたバッグ。右) 生活に取り入れやすい小物も取り扱う。PCケースのファスナー部分もエコ素材。

その取り組みが的を射ているかどうかは、数字に如実に表れている。新型コロナウイルスの感染拡大でアパレル業界が苦境に立たされるなか、CLOUDYの2020年度の売上高は前年比3倍の伸びを見せた。「メッセージではなく、商品に徹底的にこだわる。この1年で、自分たちの取り組みが間違いじゃなかったと確信できた」と銅冶は胸を張る。

ユニークなのは商品だけではない。ビジネスモデルもまた独創性に富んでいる。実は銅冶、営利企業であるDOYAのほかにNPO法人「Doooooooo(ドゥ)」の代表も務めている。営利と非営利を両輪で回す循環型ビジネスを成立させているのだ。

具体的にはこうだ。まず、アフリカの女性や障がい者を直接雇用し、ガーナに5カ所ある自社工場で商品をつくってもらう。それをCLOUDYブランドで展開し、売り上げの10%をNPO法人に還元する。

その資金を主にガーナの公立学校の建設や健康支援に回すことで、子どもたちの可能性を広げていく。教育を受けた子どもたちは将来、希望すればCLOUDYの工場で働くことができる。そこで生まれた商品をアパレルビジネスとして展開し、数字をつくり、再びNPOの活動資金に充てる。

計算されたビジネスモデルのように思えるが、「NPOを始めた当初は、アパレルビジネスをやることになるなんて想像もしていなかった」と銅冶は言う。現場に足を運び、そこで暮らす人たちと対話を重ね、「彼らにとってベストな支援のあり方」を問い続ける──。CLOUDYが生まれた背景には、試行錯誤の日々があった。

「持続的な支援」の本質は何か


きっかけは大学の卒業旅行で訪れたケニアのスラム街・キベラにあった。悪臭が立ち込める劣悪な環境で暮らす人々。学校も仕事も、満足のいく食事もない。それでも、出会った人たちの顔や手には必死に生きてきた証しが刻まれていた。「この人たちのために、一生をかけて何かやろう」。そう誓った。

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西ガーナのアブイ・チタイ村に学校を建設。学校がなかった同地域だが、NPOの名前にちなんでDoooooooo Schoolと名付けられ、300人を超える子どもが通う。

ゴールドマン・サックス証券に入社し、激しい競争環境下で戦いながらもアフリカの光景が脳裏を離れることはなかった。2010年にNPOを創設し、アフリカに学校をつくるという思いをかたちにしていく。だが、「教育の機会を提供しても、収入を得られなければ生活は良くならない」ことに気づく。それは、途上国支援の本質を学んだ瞬間でもあった。

現地の人たちの文化や習慣を生かしつつ、数字を作れるビジネスは何か。その解を探すなかで目に留まったのがミシンを踏む女性たちの姿だった。

「布を使ったモノづくりは現地のライフスタイルに根付いているし、ファッション性もある。アパレルビジネスとして、いけるんじゃないかと思った」
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文=瀬戸久美子 写真=平岩亨

この記事は 「Forbes JAPAN No.079 2021年3月号(2021/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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