最先端の経済誌「Forbes JAPAN」の記事紹介


ある物事に出合うとき、その人の置かれた境遇やそれまでの経験によって、見え方や意見が全く異なってくることってあると思うんです。そこで私は、藤本さん の言うように「耳を澄ませること」が大切だと思う。「ちょっと待って、それはどうして?」とか「なぜそう感じたの?」とか、聞いていくこと。すぐに理解し合えなくても、ある程度の時間を一緒に過ごすことで気付けることもある。そういう時間や空間、そして「耳を澄ませる」姿勢が、現代の私たちからは失われているような気がしていて。

宮田:それぞれが、自分の信じる絶対的価値をぶつけ合っているように映りますね。インターネットで便利につながることができるようになったけれど、一方で、価値観が合う人たちだけでタコツボ化してしまい、分断が生まれてしまう。

河瀨:「自分の立場はこうだ」ということを、強く主張していかないといけない時代になっていますよね。時間的余裕もあったからかもしれないけれど、私たちは相手に対しても、自分自身の心に対しても、昔のほうが「耳を澄ませる」ということをしていたような気がします。

例えば、日本の文化を象徴するような言葉の一つとして「皆まで言うな」ってあるでしょう。それが成立する前提には、互いが耳を澄ませ合うこと、言い換えれば「関係性の中の想像力」があったのだろうと思います。

反射的な言葉は一旦のみ込んで、そしゃくしてから相手に言霊を渡す―互いに想像力を働かせ合うからこそ、たどり着けた答えがあったと思う。でも今、「イエスかノーか」を明確に示すことを求められる文化が浸透してきて、そのフワッとした遊びのようなものが失われつつある。「分断」という言葉も出ましたが、皆どこか、この状況に違和感を抱いているのではないでしょうか。

藤本:まさに河瀨さんの映画では、登場人物たちが皆「そこに居ること」を許されている。建築、都市空間、ひいては我々の生きるこの世界も、多様な「個」を肯定し、許容する場であってほしい。

宮田:絶対的価値はないという前提に立ちつつも、お互いの持つ価値を響かせ合いながら、新たなシェアードバリュー(共有できる価値)を見いだす。社会を編んでいく。これがますます大事になってくるのだろうと思います。お二人はクリエーションを通して、それを実践している。

私たちは2025年に開催予定の大阪・関西万博のプロデューサーを務めていますが、藤本さんが設計した会場デザインが2020年12月に正式に発表されました。全 てのパビリオンにアクセスできる、リング状の屋根付きの主動線が配置されているのが特徴ですね。多様なものを、「リング」でゆるやかに囲んでつなげるというコンセプトが素晴らしいです。

文=加藤藍子 写真=ヤン・ブース ヘアメイク=今村麻里子 衣装協力=ユーモレスク

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