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Photo by Tomohiro Ohsumi/Getty Images

橋本聖子新会長が誕生した。東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の会長である。新会長誕生の流れを私なりに追ってみる。

女性蔑視発言の釈明謝罪会見を森喜朗氏が行なったのは2月4日。記者との質疑応答で実際には男女平等についての認識がないことを露呈した形となり、世界の批判が止まない状態が続いた。本人に辞任の意志はなく、周囲からも「余人に変えがたい」という意見が蔓延るような状況だった。

会見後の国際オリンピック委員会(IOC)の見解はその後の記者とのやり取りについての認識はなく、「一件落着」としたことが、森氏の続投を支えた。が、その後も森氏批判は止むことがなく、世界の反応と動向を冷静に分析していたIOCは2月9日に声明を出すに至った。

その声明で「森氏の発言は絶対的に不適切である」としたことで、一挙に森辞任への機運が高まった。絶対に辞任しないと思われていた森氏もこの声明を理解するだろうと踏んだ関係当局、すなわち政権、そして都知事は森下ろしに舵を切った。森氏は辞任の意思を固めたが、その後任に川淵氏を選び、動き出したことが、露呈された。小池都知事は17日に予定されていた四者会談(IOC、政府、都、組織委)の欠席を表明し、官邸は「透明性ある人事」を求めた。

要約すれば、国も都も「森さんお疲れ様でした」ということである。都は新会長なき四者会談は意味がないので欠席するし、「ちゃんとこちらも見えるところで人選してくれ」と官邸がサインを送ったのだ。決して国民にとってのガラス張りの「透明性」を求めたわけではない。

森氏が続投の最後の砦と思っていたのはバッハ会長、IOCである。その頼みの綱が2月9日のIOC声明文で切れたのである。


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森氏は2月12日の評議員会と理事会の合同懇談会で辞任を表明した。そして組織委は「透明な選定」をするために候補者検討委員会なるものを設置した。注目すべきはこの検討委員会の完璧な守秘性であった。メンバーも選考方法も非公開であった。メディアから流れる情報がそのことを逆説的に示していた。様々な候補者の名前が紙面を飾り、新会長には各紙とも違う候補を挙げていた。

組織委が目指した「透明性」は選出の「公平性」であり、様々な利害関係者からのアプローチが検討委員会メンバーに及ばないことに配慮したように思える。守秘性を重んじることにより、都からも国からも圧力が及ばない状態を作っていると主張したかったのではないか? 一般の考える「透明性」は内容が全て可視的であることであり、人事の場合、それは非常に制限されたものになるはずだ。

それなら組織委から上述の如く説明をすることができなかったのはなぜか? 「様々な勢力から人選を守るため」と言えば、それ自身がその人事に政府の介入を前提としていることになりかねないからである。明らかにIOCを意識している。

文=春日良一 編集=宇藤智子

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