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野村不動産都市開発事業本部ビルディング事業一部・事業企画課長 佐藤夏美(左)、SUBARU Lab副所長 齋藤徹(右)

新型コロナウイルス感染症の感染拡大は、社会や働き方を大きく変容させた。

在宅勤務、テレワークやローテーション勤務、サテライトオフィスの活用など、働き方が多様化するなかで、あらゆる企業でオフィスの見直しの動きが加速している。

メインオフィスの価値が問い直されるいま、個人のパフォーマンスを最大化し、ブランディングや従業員のエンゲージメント、人材獲得など、さまざまな側面から企業の成長に貢献できるオフィスが求められている。

そうした時代のニーズを的確に捉えた、野村不動産の従業員10名未満のクオリティ・スモールオフィスブランド「H¹O(エイチワンオー)」(Human First Office)が注目を集めている。

野村不動産は、旺盛なニーズに応えていくために同ブランドを2023年度末までに15拠点開設し、東京都心5区(渋谷区・新宿区・中央区・千代田区・港区)を中心に拠点拡大を予定している。

同ブランドの理念、クオリティに共感し、新しい働き方を実践する場として2020年11月20日にオープンした「H¹O 渋谷三丁目」へ入居を決めた企業がいる。大手自動車メーカーのSUBARUだ。

同社は運転支援システム「アイサイト」の開発チームのイノベーション拠点として、「H¹O 渋谷三丁目」の1フロアを借り上げ、同12月に「SUBARU Lab(スバルラボ)」を立ち上げた。最先端のテクノロジーを駆使するエンジニアたちを環境面からサポートしていく「SUBARU Lab」が目指す働き方とは? 同社の心臓部ともいえる研究開発チームの拠点を、なぜ自社内ではなく、「H¹O」に求めたのか? 

野村不動産×SUBARU、H¹Oを提供する野村不動産都市開発事業本部ビルディング事業一部・事業企画課長の佐藤夏美と、SUBARU Lab副所長の齋藤徹の対談を通して、ニューノーマルの時代に価値を生み出す、新たな働くかたちを考察する。

コロナ禍でスピード重視。明快なコンセプトを得たオフィス改革


──SUBARU が世界に誇る先進技術「アイサイト」。そのAI開発拠点となる「SUBARU Lab」を開設された経緯と事業内容を教えてください。

齋藤徹(以下、齋藤):SUBARUでは1989年以降、富士重工業の時代から運転支援システム「アイサイト」の開発を進めてきましたが、2020年10月発表の新型レヴォーグでその技術を結集させ、開発にひとつの区切りをつけました。今後は、これまでのアイサイトの技術を基盤に、AI技術と融合させることでさらに安全性を進化させていく方針です。

「SUBARU Lab」は、「これまでのアイサイトの技術をさらに引き上げるため、AIに特化して技術開発を進める場所」、という位置づけになります。

──恵比寿に本社、三鷹と群馬に開発拠点もありますが、なぜ「渋谷」に新たなオフィスを設けられたのですか?

齋藤:近年の再開発によりIT企業集積地として進化する渋谷にオフィスを構えることで、エンジニアの意識改革を図ること、そして、AI開発に必要な優秀な人材の獲得およびIT関連企業との連携を推進するという目的がありました。現在、当社のエンジニア20数名がラボに移っており、それとほぼ同数の人材を外部から採用する予定です。

背景にあったのが、自動車業界の急速な構造変化です。なかでも私たちがいちばん危機感を感じているのが、働くプレーヤーの中心が変わってきていることです。IT系の技術が自動車にもかなり入ってきていて、そこでの競争がより熾烈になってきている。その最たる分野がAI開発なのですが、ヒューマン・リソースの観点からみると、GAFAに代表されるIT企業が世界中から優秀な人材を獲得している傾向があるのは否めません。その流れをSUBARU Labへ向かわせるためにも、渋谷という新天地で魅力あるワークプレイスをつくる必要がありました。


SUBARU Lab副所長 齋藤徹

──コロナ禍でオフィスを縮小する企業もあるなか、あえてこのタイミングにオフィスを開設されたのにはどんな意図があったのでしょうか。

齋藤:プロジェクト自体はコロナ以前にスタートしていました。感染の拡大によって企業がテレワークを拡充し、オフィスは確かに要らなくなっているようにも思えます。しかし、よくよく考えると、これまでのオフィスのかたちが要らなくなっているだけのこと。次のステップとして考えるべきは、これからの時代に求められる価値であり、その価値に合わせてオフィスを再設計することが重要だということに気づきました。

まずは原点に戻り、何のためにオフィスに来るのか、を考えました。エンジニアに尋ねると、「ニュアンスの難しい会議や調整はみんなで集まって一気にやる」「家だと子どもがいたり場所がなかったりで、集中できない」「実験機材などは会社に来ないと使えない」という、3つのニーズが強いことが分かったんですね。

そこで、新しいオフィスは、コミュニケーションを最大限に活性化でき、自分の仕事に没頭できる場所にしよう。つまり、“目的に適した場を提供する場所”につくり変えようと方向性を固めたのです。

オフィス改革に積極的な先進企業は、コロナ禍を契機にボトルネックをあぶり出し、具体的な対策を始めているはずです。コロナ禍だからこそ、改革をスピードアップするのが競争に勝ち抜くための施策である、そう考えたときに最も先進的な働き方を提案してくれたのがH¹Oだったので、入居を決めました。

 「人=(個)」の潜在能力を解放する最先端のサービスオフィスH¹O

──SUBARU Labの新たな拠点となった、野村不動産の少数精鋭企業向けサービスオフィスH¹Oは、2019年11月から都内で展開されていますが、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか。

佐藤夏美(以下、佐藤):H¹Oは、「ヒューマンファーストオフィス(Human First Office)」の頭文字をとったサービスオフィスのブランドです。10名未満で働く少数精鋭の企業向けのオフィスで、そこで働く従業員一人ひとりのパフォーマンス最大化を目的としています。

近年は、テクノロジーの進化によって革新的なサービスやプロダクトを生み出すスタートアップやベンチャーが増えていますが、資金調達力のある企業は働く環境への投資を重視する一方、彼らのニーズを満たすオフィスが少ないという現状がありました。本来は、企業の成長ステージに合わせてオフィスも進化させていくのが理想です。そこで、企業が生み出す価値に見合ったオフィス選びができる環境を提供していくのが、私たちデベロッパーの使命ではないかと考えたのがH¹Oの始まりです。

開発にあたり、私たちは「ヒューマンファースト」という事業思想を掲げました。これからの価値創造社会を生き抜くために、働く人の気持ちに寄り添い、個の潜在能力を最大限に発揮できるオフィスとサービスを提供するという思想です。

具現化に向けて「自分らしさ」「心地よさ」「豊かな感性」「心身の健康」という4つの価値指標も設けています。指標があることで、むしろソリューションの幅は広がります。ユーザー様一人ひとりが自律的かつ快適に働くことにより、個人のパフォーマンスの最大化を実現できるよう、開発者から最前線でサービスにあたるスタッフまでが思いを共有するよう努めています。

もともとは少数精鋭企業をメインターゲットにスタートしたH¹Oですが、2019年11月に第一号物件の「H¹O日本橋室町」がオープンし、その後、西新宿、日本橋小舟町、渋谷神南、そして渋谷三丁目と展開する過程で、大企業の新規事業部やプロジェクトチームが入居されるケースも徐々に増えています。SUBARU Labさんが1フロアすべての専有個室を借りられたことで、H¹Oにおける新しいワークスタイルが始まったともいえるかもしれません。


野村不動産都市開発事業本部ビルディング事業一部・事業企画課長 佐藤夏美

──SUBARU Labとして「H¹O」に入居を決めた経緯とポイントを教えてください。

齋藤:野村不動産が手がける物件の上質なグレード感やセキュリティの高さは、都心における数々のオフィス開発の実績から十分知っていました。そこで、フロア設計を自前でするつもりで、中規模ハイグレードオフィス「PMO」を見学していたのですが……。あるとき、私たちの事業内容を知る営業の方から、「プロジェクト単位で動く可能性や増床の可能性があるのなら、個室を複数区画借りる方法もありますよ」と、同じビルのワンフロア下に計画中だったH¹Oのパンフレットを手渡されたのです。

プランを見ると、開放的な共用ラウンジを中心に4つの会議室と大小6つの個室がバランスよく配された間取り。「コワーキング」と「機密性」を両立させる空間設計は、オフィスの概念を一新させるとともに、ベストソリューションを予感させました。

とりわけ共感したのが、共用ラウンジの設備とサービスの充実度でした。多彩な居場所があり、コーヒーや紅茶のほか数種類のスープやヘルシーフードの提供もあるという。従業員の健康が生産性に影響するという考え方は、多くの企業でも一般的になってきています。しかしその反面、これを自前でやるのは非常に難しく、前例踏襲の壁を越えられないだろうという予測も立ちました。「働く場所を変える」「会社を変える」という思いから改革を始めている以上、自前ではなく、外部の最先端オフィスに入ったほうが、スピード感をもって、実現したい効果が得られると判断したのです。

また、小割の貸室は全室個別空調システムとなっており、それぞれの空間において快適な温度設定が可能になることも好条件に思えました。エンジニアが集中して仕事するための快適性は大事だと思います。他のコワーキングスペースも見て回りましたが、ここまできめ細かな空間設計をしているものはなかなかありませんでした。


たっぷりと採光がとれた広々とした「H¹O 渋谷三丁目」の共用ラウンジ。


共用ラウンジに併設されているBarカウンター。


入居者の思いを吸収してチューンアップを図る


──入居されてまだ日は浅いですが、どのような感想をもたれていますか。

齋藤:想像どおり、ものすごくいい。本業に集中できる個室があり、気分やシチュエーションに合わせて共用ラウンジを活用して、ときどきブレイクして。隅々まで計算された上質な空間は気持ちがよく、心が落ち着きます。小さなことかもしれませんが、ドリンクなどが工夫されていることで従業員の満足度は変わりますし、モチベーションは確実に上がっています。

また、これだけ生き生きと仕事ができる環境を用意できる、この「価値」がもたらすメリットは甚大だとも感じています。いまは、野村不動産さんがなぜこのオフィス事業に力を入れているのかがよく理解できますね。



佐藤:私たちは、ユーザー様に「自律的に働く場所を選べる」という価値を提供したいと考え、H¹Oの共用ラウンジは、オランダから始まった「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」に基づいて、仕事内容によって時間と場所を自由に選択できる環境をデザインしています。窓辺のカウンター席で集中したり、テーブル席でカジュアルに打ち合わせをしたり。アメニティのコーヒーやスープを飲んでリラックスした状態で、アイデアが浮かぶこともあるのではないでしょうか。

そうやって私たちが仮説を立ててつくったものを、そのとおりご評価いただいているのがすごく嬉しいですね。と同時に、いまのこのかたちが100点満点ではなく、ここから、入居者様の声を反映しながら、チューンアップをしていきたいと思っていますので、いろいろとご意見をいただけると有り難いです。

──H¹O開業以来、入居企業からのリクエストに対応した具体例があれば教えてください。

佐藤:例えば、コロナ禍を受けてお客様の不安に寄り添うため、個室内の壁紙を抗菌効果のあるものにしました。ラウンジなどの共用部にもウイルス感染予防のための空気感染対策設備を導入しています。一部の物件で試験的に行っていることですが、エレベーターの呼び出しをスマホにダウンロードいただいた入居者専用アプリ上で呼び出し可能とすることで、共用部の非接触化に挑戦しています。

エントランスや共用ラウンジ、各オフィスの入り口に導入している3D顔認証によるキーレスセキュリティ設計については、現在、マスクを着けた状態でも快適性を得られるよう性能向上を検討しています。

また、共用のクラウド型複合機は、セキュリティ面を重視し、利用時に複数回の操作が必要な仕様にしていました。ただ、「もっと簡便にしてほしい」というオーダーがあり、オペレーションを変更したという例があります。

その他にも、当初朝食中心に提供していたヘルシーフードは、「甘いものが食べたい」「ランチのほうが嬉しい」という要望を反映して、おやつやランチ時にも提供するよう運用を変更し、フレキシブルに展開しています。改善できるものと、できても時間のかかるものはありますので、優先度をつけて取り組んでいます。

齋藤:いまはコロナ禍で難しいとは思いますが、そのうちテナント企業間の交流の場を設けてほしいですね。私たちの力では無理なので、ぜひ盛り上げて引っ張っていってほしい。

佐藤:ええ、もちろんです。状況を見極めつつ、テナント企業様の入居がある程度進んだ段階で、同じビル内の交流会やH¹Oシリーズ間や、PMOシリーズ含めたテナント企業様の交流会を開催したいと思っています。分譲住宅事業や先行して進めてきたPMOにおける数々の経験から、私たちは交流から生まれる価値を知っていますから、オンラインも視野によりよいかたちを追求していきます。



H¹OとSUBARUのシナジーが示す、これからの新しいワークプレイスとは


──ニューノーマルの時代を迎え、H¹Oの活用に変化は現れていますか。

佐藤:これまでのオフィスのあり方ではないものを求める方向に、いち早くシフトチェンジする企業が増えているように感じます。事業戦略によって、柔軟な働き方やそれを支えるオフィス環境をきちんと再整理し、重要度が低下した機能は絞って価値あるところに投資をする動きが目立ちます。例えば、“面積“ではなく“空間の質“を重視するような傾向もそのひとつだと感じています。渋谷においては「H¹O渋谷神南」と「H¹O渋谷三丁目」が稼働していますが、その判断と実行がほかのエリアよりも速いという感触があります。

──利用形態などニーズにおける際立った傾向はありますか。

佐藤:ニーズとしては人材採用強化のためにご入居を決めていただいたり、コストや面積を削減したいがグレードは維持もしくは向上させたいという観点でお選びいただくことが多いです。また、入居後も事業計画に沿って最初は小さめのお部屋を借りて事業進捗に応じて隣のお部屋を借り増しされたり、館内で大きなお部屋に移られたりというケースも目立ちます。H¹Oの特長のひとつである「柔軟性」の部分を活かしていただいている例です。

同じように、「オフィスのポートフォリオを再構築する」という発想で、PMOを1フロアとH¹Oを1〜2部屋セットで借りて、加えて外出の多い営業部隊用にサテライト型シェアオフィスのH¹Tを活用するという事例も増えています。「H¹O渋谷三丁目」はPMO渋谷Ⅱというビルの2~4階にH¹Oを備えたPMOとH¹Oのミックス型で開発していることもあり、複数のブランドを組み合わせてお使いいただくパターンが増えています。プロジェクト単位・3カ月単位でH¹Oを借りることができ、かつ一部屋H¹Oを借りれば共用ラウンジと会議室が使えるので固定費の効率化につながる。そこをメリットと捉えていただける企業様は多いですし、その柔軟性が今後のオフィスのあり方としてとても大事だと考えています。


左上:H1O(エイチワンオー / Human First Office):クオリティ スモール オフィス
左下:H1T(エイチワンティー / Human First Time):サテライト型シェアオフィス
右:PMO(ピーエムオー / Premium Midsize Office):中規模ハイグレードオフィス

SUBARU Labさんのように、1フロアで100坪のオフィスを借りるのではなく、あえて小割区画を複数借りる方が便利、というご意見も印象的でした。つくり手としては、『そのようなニーズもあるのではないか』という予測が現実のものとなり、ご好評をいただけたことは非常に感慨深いです。



野村不動産が提唱する「オフィスポートフォリオ」の考え方


──齋藤さんが考える「これからのワークプレイス」をお聞かせください。

齋藤:企業の業務内容やプロジェクトの単位などさまざまな要因によって、多様なワークスタイルとワークプレイスが存在します。そのことを踏まえたうえで、私たちSUBARU Labにとっては、個室の複数区画活用は思った以上に快適な使い心地でした。

適度な大きさに仕切られた大小6つの空間は、5人、7人、10人などユニット単位で使うことができ、そこでミーティングやテレビ会議が始まっても、同じチーム内なのでそれほどノイズにはならない。また、壁で仕切られていることで「集中」「コミュニケーション」「リラックス」など目的別に使うことも可能です。もしかしたら、このような「個室複数区画+共用ラウンジ」というスタイルがこれからのワークプレイスの主流になるのではないかという気もしています。そして、ホスピタリティを感じられるような空間も、これからのワークプレイスには必要になるのではないかと。

今後、人材確保を進めて最終的には約50人の集団になる予定ですが、テレワークと出社の併用に加え、共用ラウンジの活用を組み合わせることを想定して座席数を減らし、一人当たりのワークスペースを広くとり、ゆったりと作業できる環境を整えています。もし人数が増えて狭くなっても増床は可能。そういったフレキシブルな考え方を入れやすいのも、H¹Oの魅力です。

佐藤:世の中の急激な変化にともない働き方が多様化し、H¹Oにも新たなニーズが生まれています。私たちはこれからも、そのさまざまな気づきや価値観から示されるニーズに耳を傾け、すべての入居企業、そしてユーザー様にとってより自由度の高い環境を提供していきたいと思っています。

最先端の外側へ、技術革新を推進するために求めたのは、エンジニアのパフォーマンス向上と優秀な人材獲得。ワークプレイスを変革することで、その未来が動き始めている。H¹Oには、アップデートを継続しうる力、イノベーティブディスティネーションとしての源流があるのではないだろうか。

▶野村不動産「H¹O」

Promoted by 野村不動産 │ 文=五十嵐せい 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫

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