グーグルから企業秘密窃盗の大物エンジニアが「恩赦」された理由

アンソニー・レバンドフスキ(Stephen Lam/Getty Images)

ドナルド・トランプは1月20日、米国大統領の任期終了を目前に、73人の恩赦と70人の減刑を発表した。

恩赦を受けたメンバーには、スティーブ・バノン元首席戦略官が含まれていることが広く報じられたが、テクノロジー業界で注目を集めるのが、ここにグーグルの自動運転部門の元責任者で、同社から企業秘密を盗み出した罪で禁固刑を宣告されたアンソニー・レバンドフスキ(Anthony Levandowski)が含まれていたことだ。

かつてグーグルの自動運転部門の技術責任者を務めたレバンドフスキは、ウェイモがグーグルから分社化された直後の2016年に、ウェイモを退社した。彼は、ウェイモを離れる前に、1万4000以上のファイルを密かにダウンロードして持ち去り、その後、ウーバーの自動運転部部門の幹部を務めていた。

レバンドフスキは、2020年8月に18カ月の禁固刑を宣告されていた。

トランプ政権は開示資料の中で、レバンドフスキが「過去の行いに対して多大な代償を払い、今後は自身の才能を公共の利益のために捧げようとしている」と述べている。さらに、レバンドフスキの事件を担当したウィリアム・アルサップ判事の言葉を引用し、レヴァンドウスキーを 「我が国が必要としている輝かしい、画期的なエンジニア」と評している。

レバンドフスキは裁判で、刑務所での禁固刑ではなく、自宅監禁を求めていたが、アルサップ判事はこれを拒否し、「エンジニアが企業秘密を盗むことを許してはならない。彼には刑務所がふさわしい」と述べていた。ただし、彼が刑務所に収監されるのは、新型コロナウイルスの脅威が去ってからとされていた。

ホワイトハウスによると、今回の恩赦は、著名投資家のピーター・ティールやOculus VRの創設者パーマー・ラッキー、ハリウッドのエージェントであるMichael Ovitzらの強力な後押しを受けてのものだという。

ウェイモを退社した直後の2016年1月にレバンドフスキは、長距離トラックを自動運転化するスタートアップの「Otto」を創業したが、その数カ月後にウーバーが同社を買収した。そして、2017年2月に、グーグルの親会社アルファベットがウーバーを、知的財産権の侵害で訴えた。

レバンドフスキはもともと、2007年にソフトウェアエンジニアとしてグーグルに入社し、ストリートビューの開発に携わっていた。その約1年後、グーグルでの勤務と並行して、彼は「Anthony’s Robots」と呼ばれるスタートアップを立ち上げ、自動運転テクノロジーの開発を開始していた。

編集=上田裕資

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