「美食のワンストップ・ショップ」は家族の財産
その哲学は店の方針からも見ることができる。「季節になじんだ、また都会に暮らす顧客の人生の記念日などに適応する生きたブランドを創造することです」
店の特徴については、ジャドは次のように話す。
「商品を好みにあわせてひとつずつチョイスして箱詰めできることです。オンラインショップでも、お客さまはそれぞれお好きなフレーバーを選ぶことができます。ジャック・ジュナンはオーダーのできる店ですから、この仕組みを最大限に活用したいと思っています。
また私たちの店は、美食のワンストップ・ショップでもあります。チョコレートだけでなく、砂糖菓子からケーキ、アイスクリームにいたるまで、すべてが最高に美味しいのです。店内の商品、どれもがハイレベルで絶品です。他の店を回る必要などありません」
近い将来、ジャドは店をひっぱっていくことになるだろう。他人がその看板を乗っ取ろうとしてもそれは無理なことだ。ジャドも断言する。「このブランドは私たちの家であり、家族の財産です。これからも変わらずにそうあらなければならない。言うなれば『ジャック・ジュナン』は過去であり、現在であり、未来なのです」
チョコレートは、ヴァンドーム広場のショーウィンドウで輝く宝石と同じように光り輝き、人々を魅了してやまない。事実、トリュフやガナッシュ、オランジェット、パート・ド・フリュイ、ヌガーらは宝石箱のような箱に入って売られている。
フランス人のひとり当たりのチョコレート年間消費量は7.5キロを超え、これは世界でも6番目に位置する。いかにフランス人にとってチョコレートが必需品かということと同時に、重要な経済でもある。クリスマス、イースターなどでも、チョコレートが一番人気だ。ジュナンの店では一年中、洗練されたチョコレートに出会えるのだ。
日頃からSNSを駆使しているジャドのインスタグラム(@jacquesgenin)をのぞくと、まずは興味を持ったことを投稿することから一日を始めていることが多い。
時には、家族のアトリエで仕事をしている写真の場合もある。
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ジャドのインスタグラム(@jacquesgenin)より。
店の商品と同じようにフォトジェニックで花のように美しく、カラフルでファッショナブルなジャドの姿から笑みが消えることはない。「年がら年中、本当に幸せです! チョコレートは私を必要としていないかもしれませんが、私の方は絶え間なくとりこにされているのです」と言い切った。それを聞くと父、ジャック・ジュナンの口癖が思いだされる。
「私がこれは仕事だと感じるような日があったとしたら、もう店に来ることはないでしょう」