ツイッターのトランプ元大統領永久追放から考える「SNSのDX」

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既にブロックチェーンを活用したSNSプラットフォームは世界中にいくつか存在している。古くはスティーミット(Steemit)というものがあり、そこから仲違いしてヘイブ(Hive)というプラットフォームも生まれた。またイオス(EOS)のブロックチェーンで動くヴォイス(VOICE)というものもある。さらに日本でもイーサリアムのブロックチェーンをベースにしたアリス(ALIS)というプラットフォームがある。

それぞれのプラットフォームで細かい設計は異なるが、共通しているのがトークンというインセンティブを使って、そのプラットフォームによって良い記事が正当に評価され、その評価者にもインセンティブのあるアルゴリズムを実装しているところだ。

詳細は割愛するが、例えば1つのアルゴリズムとして、いい記事を誰よりも早くいいと判断した読者に多くのトークンが配布され、そのように高評価された記事の執筆者にもトークンが配布される仕組みが実装されている。そのトークンはもちろんプラットフォーム外でも取引が可能で、一定の価値を見出されていれば、法定通貨との交換も可能になる。

すごく簡単に言えば、記者はいい記事を書けば稼げる、読者は本当にいい記事をいいと判断すれば稼げる、そしてそのプラットフォーム利用者が増えるようにユーザーがプラットフォームの理想(治安)を保っていけば、よりみんなで稼げる、という仕組みだ。

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ポストDXは、「DAO(自律分散型組織)的」SNSプラットフォームが台頭する?


このような仕組みが実現できれば、マストドンのインスタンス管理者が負荷となっていた意思決定を、利用ユーザーに分散させることもできる。

もちろんこれらのブロックチェーンを活用したSNSはまだまだユーザー数は少ないため、その理想までアルゴリズムを回せているとは言い難い。ただこのように中央の管理者だけではなく、ユーザーもそのプラットフォームの運営、維持に関わるようなことがブロックチェーンを活用すれば実現できる。

このような考え方は、ブロックチェーン技術の応用のひとつとしてDAO(Decentralized Autonomous Organization:自律分散型組織)と呼ばれている。

現在の米国や世界の状況を危機的な「分断」と語るのは簡単だ。ただ少し冷静に考えると、私たちはもしかしたらインターネットによって少し近づきすぎたのかもしれない。そもそも世界中にはさまざまな思想が溢れていて、簡単に優劣や善悪を判断できない。

その反動として繋がりを断つ分断ではなく、緩やかに繋がりながら適度に分散化していく必要があるのではないだろうか。

今回のトランプ元大統領アカウント問題から、DAO的な概念を実装したSNSプラットフォームが、ポストDXの世界においては主流になるかもしれない、もしくは世界中の多様な人々がそれぞれの身近な幸せや安定を手に入れるために、主流になって欲しいと考えている。

文=設楽悠介 編集=石井節子

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