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現在の日本には、このアンチテーゼとなる文化が必要です。自らの責任で深く考えながらも、スピード感をもって行動する。スモール・ジャイアンツは、こうした文化を体現している存在といえるでしょう。

人材・資金・制度など、足りないものが多い彼らは、常に背水の陣で勝負をかけます。加えて、従業員や地域社会を背負い、“同じ場所”から逃げずに一“所”懸命に戦うのも彼らの特徴です。ここが、一“生”懸命やるが駄目なら次へ、となりがちなベンチャー文化と違うところです。

この制約のなかで生まれる事業が、実は面白い。既存の商売・流通のなかでは大企業に軍配が上がる分野でも、常識にとらわれないアイデアを素早く実行に移すことにより、独自路線を打ち出せることが多々あります。それが時に、業界のあり方を変えてしまうようなイノベーションを起こすのです。

例えば、第3回アワードでグランプリを受賞したコエドビールの協同商事。かつて地ビールと呼ばれていた日本の少量生産ビールは、ブームの終焉とともに撤退する企業が多くありました。しかし、同社は味の追求と同時に、クラフトビールという新しい文化を根付かせることでブランディングにつなげ、成功を収めています。今ではクラフトビール市場は大きく成長し、大手も続々と参入するビールの一ジャンルとなっています。


組織文化の傾向

とはいえ、「スモール」を維持していてはもったいない。“規模の経済”を追求することも重要です。組織が大きくなれば、さらに大きなマーケットをつかめるかもしれませんし、利益率が高まり内部留保が増えれば、将来への投資もできるようになります。

現代は揺り戻しの時期といえそうです。同じ車を大量生産していればどんどん儲かった時代には、足並みを揃えて言われたことをきちんとやる大組織文化が求められていました。

しかし、安定成長の時代が終わり、現代は先の見通しが立たない時期です。歴史を振り返ると、江戸幕府の支配による大組織文化の後に、明治・大正時代という、新しいものを積極的に取り込み、個人が活躍する時代が来ました。ここに、スモール・ジャイアンツ文化と非常に似通ったマインドを感じます。

動乱の時代に、あえて挑戦する。大組織的文化とこの文化を両輪として、大企業にも根付かせていくことが、今の日本への処方箋のひとつになるでしょう。この文化を広め、偏ったバランスを変えていけば、日本の未来も見えてくるのではないでしょうか。


内田研一◎ビジネスプロデューサー。多くの中小企業支援を経験し、製造・IT・食品業界などで活動。一般社団法人微細加工工業会事務局長/やまなし産業支援機構経営革新事業統括マネージャー

編集=フォーブス・ジャパン編集部 写真=大星直輝

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