Forbes JAPANがスモール・ジャイアンツと呼ぶ小さな会社は、いずれも創業以来の長い歴史のなかで、倒産の危機など、幾多もの困難を乗り越えて、世界に影響を与えるまでに飛躍してきた。人材も資金も何もかも足りない彼らがなぜ成功できたのか。第1回アワードから審査員を務めるビジネスプロデューサー・内田研一が、日本企業に必要な「企業文化」を語る。
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足りないからこそ勝負をかける
1500社以上の中小企業を支援してきた経験と、スモール・ジャイアンツ アワードに審査員として携わって見えてきたことがあります。それは、企業の付加価値をどう高めるかを考えると、「企業文化」に行き当たるということ。よい仕事の裏には、現場に適切に裁量を与える社長や、我を忘れて仕事にのめりこめる環境など、会社それぞれのよい雰囲気があります。この集積が文化です。
しかし、今の日本では、大組織的な文化が浸透しすぎたあまり、弊害が出ている面があります。例えば、縦割り型の組織構造で役割が固定され、組織が硬直化していくケース。上意下達的な意思決定の連鎖により、自ら考えて行動する意識が希薄になってしまう。責任の所在がはっきりせず、無責任や忖度がまかり通る素地にもなっています。
このような特徴は、大企業との取引に依存する下請け型の中小企業にも見られるものです。製造業の調達・購買部門は、こうした大組織文化の弊害が現れやすい領域です。取引実績はあれど技術的には突出していない会社と、優れた技術をもちつつも、まだ実績が多くないベンチャー企業。両者を先入観なく比較し、後者を発注先に選べる大企業は多くないでしょう。前例を重んじすぎる態度やリスクを取れない性分は、刻々と変化するグローバル経済に乗り遅れる一因となっています。