サムスンのGalaxyシリーズはこれまで、ユーザーがメモリを拡張できる点が売りだった。しかし、最新モデルのGalaxy S6 と S6 Edgeではこれが不可能になった。これらのモデルはそれぞれ、32/64GBと64/128GBの2種類があるが、大容量の機種は100ドルの割高となっている。
しかし、調査会社IHSのリポートによると、製造コストの差は各モデルでそれぞれ13ドルと26ドルという。つまり、大容量モデルの販売でサムソンは74ドルから87ドルもの余分な利益を得ることになる。
「サムスンはアップルと同じやり方で、利益率を改善しようとしている」と、IHSの調査担当者は分析する。iPhoneの場合も、大容量モデルは100ドルを上乗せした金額で販売されている。
サムスンの利益率へのこだわりが見えるのはメモリだけではない。
S6 Edgeでは画面が湾曲した「デュアルエッジスクリーン」を採用したが、その製造コストは推定約25ドル。S6 EdgeはGalaxy S6よりも約100ドル高い値段で販売される。
しかし、サムスン製品の利益率は、それでもアップルにはかなわない。 S6 EdgeをIHSが分解調査してみたところ、その組み立て費用は推定で290.45ドル。対するiPhone 6 Plusは236.04ドルで、サムスン製品より50ドル以上も低コストなのだ。
しかしながら、iPhone 6 Plusの小売価格は849ドルで、ベライゾンでのS6 Edgeの販売価格(799.99ドル)を50ドルも上回る。利益率の面で、アップルはサムスンを大きく引き離していることが分かるだろう。
サムスンの低コスト化への取り組みは、端末に搭載するプロセッサーにも見てとれる。今回のS6では、クアルコムのSnapdragonをやめ、自社のExynos 7420を採用した。さらに、米国で販売するAT&T版は、モデムも自社製のものを採用したことが確認されている。
しかし、サムスンのこのような努力も、「結局のところ、さほどの利益率上昇にはつながらない」と、専門家は分析する。
「サムスンは現在、市場シェアの拡大のため、多くの点で他社製のスマートフォンよりも高価な部品(規格外のセンサーやディスプレイ)を採用している。その結果、モバイル分野での利益確保は二の次になっている」との見方だ。
アップルとは違い、サムスンは極めて多角的に事業を展開している企業だ。マージンの拡大は他の分野の課題となっていると思われる。
総合的に見てGalaxyシリーズの製造原価は上昇を続けている。それに対し、アップルは常に200ドル台前半の製造コストを維持している。
「モバイルの分野でサムスンは市場シェアの維持に必死になっている。利益率よりも販売台数を優先せざるを得ない」と、業界関係者は見ている。
しかし、利益率の向上はサムスンの経営陣にとって大きな課題のはずだ。同社はこれまで15%の収益率を維持していたが、2014年第3四半期には7.1%に急落した。