ビジネス

2021.01.30

1本30万円の「お茶」と最高級の茶葉を生む80歳の名人

King of Green MASA Super premium


茶摘みで重要なのはタイミング。光合成で取り入れた養分は夜の間に新芽に届くため、新芽に届くため、朝摘みのお茶が一番良い品質だと信じて、朝のうちに茶摘みを行い、雨が降ると中止する。香気成分が流れてしまうためだ。

摘み手も、大家族だった昔は地域の人だけでまかなえたが、今は外から人を雇わなければならなくなった。日本一の茶づくりを目指すだけに、妥協はできない。収穫期になると天気予報を見ながら気を揉むと言う。


ロイヤルブルーティーの吉本氏も足繁く茶畑を訪れる

「蒸して作る日本茶は日本独自の文化。日本茶文化、そして何よりも極上の日本茶の味をしっかりと伝えていかなくては」と、そうした工夫を重ねる太田氏と吉本氏の思いが、一切の妥協を排した30万円のお茶として結実した。

日本茶の文化を次世代へ


太田氏は、築き上げた天竜茶の文化を守るため、また「日本の一次産業を守らなければ」という思いから、耕作放棄地となった近隣の茶畑を借り受けている。先代から受け継いだときに0.3haだった畑は、10倍の3haとなった。

ビジネスとして成立させるため、機械摘みも行うが、質を守るために二番茶までしか取らない。土づくりはどの畑も、受賞茶の畑と全く同じように、手間をかけて行っている。「土づくりは、一朝一夕でできるものではない。農業にとって一番大切なのは土。農家は土に一番投資をすべきだ」と考えているからだ。

しかし、その考えを理解している人は多くないのかもしれない。「今から50年ほど前、開墾のために地元の金融機関に融資を申し込んだが、受け入れてもらえなかった。機械優先、化学薬品優先の融資が主だったからだ。でも、農業機械や工場などは、25年もすれば老朽化して使えなくなる。開墾にきちんと投資した八女茶などの産地は、今は有名な茶所となっている」と太田氏は言う。

そうして茶づくりに向き合う傍ら、「おいしい日本茶を知ってもらいたい」と地元の子どもたちの給食に上質のお茶を提供するなど、お茶に親しんでもらう活動も続けている。娘夫婦や孫も茶づくりに携わり、そのDNAは脈々と受け継がれているが、太田氏が見ているのは日本茶業界全体の発展だ。

80歳の名人は、世界に、そして次世代に、日本茶の文化が広く受け継がれていくよう願っている。

文=仲山今日子

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