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発達障害の診断を受けた息子・大夢くん(左)と母・菊地ユキさん(右)(本がすき。より)。

「学校の先生の助けを借りながら、私も母親として、あの子が学校で少しでも過ごしやすくなるよう、私なりの工夫をしました」

こう話すのは秋田県潟上市で美容室を営む菊地ユキさん(51)。

地域で初めて発達障害の診断を受けた長男・大夢くんを育て、苦労の末に東大の大学院に入れたシングルマザーだ。

8月19日に、これまでの育児のことをまとめた『発達障害で生まれてくれてありがとう〜シングルマザーがわが子を東大に入れるまで』(光文社)を上梓した。

本稿は、同書から引用・再編集した連載の最終章である。

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学校生活において、さまざまな困りごとを抱えていた大夢くん。なかでも、とくに苦手なことがあった。著書のなかで菊地さんは次のように書いている。

<大夢はなにごとも「初めて」が苦手です。それは大夢をずっと注意深く観察していて気がつきました。あれ? この子、来たことないところへ来ると、落ち着きがなくなるんだ、知らない人がいると、ソワソワしだすんだ、って。>(本書より)

そこで菊地さん、忙しい美容師の仕事の合間を見つけては、可能な限り大夢くんの「初めて」に、事前に付き合うことにしたという。

なんでもかんでも「予行演習」をして、苦手な「初めて」を乗り越える


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大夢くん、9歳の時(写真は著者提供)

学校の体育館にオーケストラを招いて開かれる音楽鑑賞会。そもそも全校生徒が集まるような場所では落ち着きをなくしてしまう大夢くん。ましてや初めての音楽鑑賞会なんて……、そこで菊地さんは大夢くんをコンサートに連れ出したという。

<ちょうど、X-JAPANのTOSHIが、秋田に弾き語り公演に来ていて。そのチケットが手に入ったのです。

「あんたね、ここで2時間、黙って椅子に座って聴いていられれば、今度の音楽鑑賞会も絶対大丈夫だからね」>(本書より)

結果、コンサートも、音楽鑑賞会も、大夢くんは問題を起こすことなく過ごすことができたという。

そのほかにも、マラソン大会のコースや、遠足で訪問する場所も、事前に親子で歩いた。

<大夢にとって初めての場所に行く遠足。行った先で万一パニックを起こして行方不明になったりすると、先生たちに多大な迷惑をかけることになります。なので私は、事前に先生に遠足の行程を聞いておいて、何日か前にまったく同じコースに大夢を連れだしました。

「いい? さっきのお寺を見て、それからハイキングコースを皆で並んで歩いて、そこの広場まで来たら、皆でお弁当、食べるからね」

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