このアイデアが生まれた過程はとてもシンプル。自分は建築好きなのですが、「建築みたいに、ペットボトルを考える」ことで、普段使っているペットボトルがボルト・ナットに応用できるという新しい発見が生まれてきました。
「建築のように、ペットボトルを考 える」─ ペットボトルとキャッ プでつくる「CAPNUT」。
このように、あなた自身がもっている「好き」の視点から、プロダクトやサービスを見つめ直すことで、他人が気づかない新しい価値を発見できるようになるのです。
ちなみに僕の場合、自分の「好き」から生まれたアイデアに、あとから社会との接点(誰かの役に立つ、社会課題を解決するなど)を見つけてプロジェクト化していくことが多いです。 『Braille Neue』の場合は、目が見える、見えないに関わらず情報を共有できることが実現の決め手でした。
世の中の事例を見てみると、同じ発想でつくられたものがさまざまあることに気づきます。例えば、デンマークを代表するブランド『Bang & Olufsen(バング&オルフセン)』のヘッドホンは、北欧の家具にインスパイアされてつくられたそうです。まさに「家具のように、ヘッドホンを考える」。
冬の厳しい北欧では、家で過ごす時間が長くなります。だから、ずっと一緒にいても飽きがこない、経年変化の楽しめる家具が多い。その考え方をヘッドホンに転用し、色合いの変化や、汗や汚れがもたらす影響などを徹底的にリサーチしてつくることで、ヘッドホンに「使い込む」という新しい価値を発明し、成功をおさめています。
オーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションとは「新しい結合」だと言いました。その言葉を借りれば、あなたの苦手・無関心な仕事(=今の芝)と好きなこと(=隣の芝)の間にあるギャップにこそ、新しい結合たるイノベーションの種が隠れているかもしれません。ぜひ、みなさんもそんな仕事に直面したら、それを隣の芝から見つめてみてください。きっとそこから、あなたらしい発明が生まれてくるはずです。
高橋鴻介◎電通Bチーム・発明担当。発明を通じて、世の中に埋もれたポテンシャルを発見することがライフワーク。主な発明品に、点字と文字を組み合わせた書体『Braille Neue』など。