ビジネス

2021.01.22 12:00

苦手な仕事を楽しく変換! 隣の芝を借りる法

イラストレーション=尾黒ケンジ

この方法に気づいたのは、3年ほど前。『CAPNUT』というペットボトルとキャップで組み立てる建築を発明したときでした。ペットボトルのキャップは、子どもから高齢者まで、誰もが締められるネジ構造。しかも、意外と丈夫。CAPNUTはそれをボルト・ナットとして活用することで、手だけで建築を組み立てられるようにするというアイデアです。
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このアイデアが生まれた過程はとてもシンプル。自分は建築好きなのですが、「建築みたいに、ペットボトルを考える」ことで、普段使っているペットボトルがボルト・ナットに応用できるという新しい発見が生まれてきました。

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「建築のように、ペットボトルを考 える」─ ペットボトルとキャッ プでつくる「CAPNUT」。

このように、あなた自身がもっている「好き」の視点から、プロダクトやサービスを見つめ直すことで、他人が気づかない新しい価値を発見できるようになるのです。
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ちなみに僕の場合、自分の「好き」から生まれたアイデアに、あとから社会との接点(誰かの役に立つ、社会課題を解決するなど)を見つけてプロジェクト化していくことが多いです。 『Braille Neue』の場合は、目が見える、見えないに関わらず情報を共有できることが実現の決め手でした。

世の中の事例を見てみると、同じ発想でつくられたものがさまざまあることに気づきます。例えば、デンマークを代表するブランド『Bang & Olufsen(バング&オルフセン)』のヘッドホンは、北欧の家具にインスパイアされてつくられたそうです。まさに「家具のように、ヘッドホンを考える」。

冬の厳しい北欧では、家で過ごす時間が長くなります。だから、ずっと一緒にいても飽きがこない、経年変化の楽しめる家具が多い。その考え方をヘッドホンに転用し、色合いの変化や、汗や汚れがもたらす影響などを徹底的にリサーチしてつくることで、ヘッドホンに「使い込む」という新しい価値を発明し、成功をおさめています。

オーストリアの経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターは、イノベーションとは「新しい結合」だと言いました。その言葉を借りれば、あなたの苦手・無関心な仕事(=今の芝)と好きなこと(=隣の芝)の間にあるギャップにこそ、新しい結合たるイノベーションの種が隠れているかもしれません。ぜひ、みなさんもそんな仕事に直面したら、それを隣の芝から見つめてみてください。きっとそこから、あなたらしい発明が生まれてくるはずです。


高橋鴻介◎電通Bチーム・発明担当。発明を通じて、世の中に埋もれたポテンシャルを発見することがライフワーク。主な発明品に、点字と文字を組み合わせた書体『Braille Neue』など。

文=高橋鴻介 イラストレーション=尾黒ケンジ

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