米国の大都市、2020年は殺人の件数が急増

Stevica Mrdja / EyeEm

米AP通信は昨年末、2020年は米国史上最も死亡者数が多い年になると報じた。全死亡者数は2019年と比べ、15%ほど高くなることが予測されていた。

死者が急増した主な原因はもちろん、新型コロナウイルス感染症の流行だ。しかし、心臓や循環器疾患による死亡者が増えたことやオピオイド危機の悪化に加え、昨年は米国ではここ数十年見られなかったほど暴力が多い年となり、殺人件数が前代未聞の水準まで増えたことなど、他のより小さな要因も影響を与えている。

米調査団体ガン・バイオレンス・アーカイブ(Gun Violence Archive)は、銃撃や銃器に関連した事件で死亡した人は2020年、1万9000人を超えていると伝えた。ここ20年以上で最も高い数字だ。

ルイジアナ州ニューオーリンズを拠点とする犯罪アナリストのジェフ・アシャーの調査では、米国の57の大都市で、2019年から20年の間に殺人率が36.7%増えたことが示された。

同調査のデータの大半は11月・12月までのものだ。それによると、57都市のうち51都市で殺人の数が増えていて、37都市では30%以上の増加率を記録した。

殺人罪の増加率は都市によってばらつきがあり、シアトルでは2019年から2020年の間に74%増加した一方、シカゴとボストンではそれぞれ55.5%と54%増加した。首都ワシントンとラスベガスでも殺人罪の数が顕著に増えたが、2019年と比べた増加率は20%以下にとどまった。

ニューヨーク市の殺人の件数は40%近く上昇した。同市のビル・デブラシオ市長は、この傾向はニューヨーク市の全住民にとって心配なことで、増加を食い止める必要があると語った。米公共ラジオ(NPR)によると、デブラシオはこの傾向の一因として「新型コロナウイルスと、人々が閉じ込められていること」を挙げたと述べている。

またデブラシオは「刑事司法制度が一時中断していることが確実に関係していて、それにより多くの問題が引き起こされている」と補足した。心配なことに、殺人の増加傾向は米国の都市だけに限られたものではなく、問題は地方にも及んでいる。

NPRが指摘したところによると、アシャーは2020年の数字がまだ未確定のものだとし、年末の公式データが明らかになれば、米国では殺人件数がこれまでの記録で最も増加した非常に厳しい現実が明らかになるだろうと述べている。

翻訳・編集=出田静

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