「SATC」続編は波乱の幕開け リブート急増の裏にあるストリーミング戦争

写真左からサラ・ジェシカ・パーカー、シンシア・ニクソン、クリスティン・デイヴィス、キム・キャトラル(Getty Images)


「ビバヒル」に「ゴシップガール」リブート増加の理由


今回のSATCの続編である「And Just Like That...」のように、過去作を新たな解釈や視点でつくりなおした作品は「リブート」と呼ばれています。

過去に成功を収めた作品が時を経て、リブートされることはそう珍しいことではありません。こうした作品は多くつくられていて、1990年代に大ヒットした「ビバリーヒルズ高校白書/青春白書」のリブートとして、2019年に「ビバリーヒルズ再会白書」がスタートしましたが、1シーズンの放送のみでの打ち切りが決定、残念ながら不評に終わっています。

実は、「ビバリーヒルズ高校白書/青春白書」は、前出のSATCのクリエイターであったダレン・スターの代表作でもあるのですが、リブートには参加しておらず、その理由を、2019年のカンヌの「MIPCOM」でこう告白していました。

「作品が続いていることを目にして、本心から喜んでいます。でも同時に、クリエイターの私にとってリブートというのはそれほどワクワクするものではないのです」

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オリジナルシリーズのクリエイターであったダレン・スター。新作には関与していない(Getty Images)

そう語っていたスターが、いまワクワクしているものは、シーズン2が早くも決まったネットフリックスのオリジナルシリーズ「エミリー、パリに行く」の製作なのでしょう。カンヌでは、「エミリー、パリに行く」で新しいチャレンジに挑んでいることを実に楽しそうに話していたスターの姿がありました。

リブート版のSATCにもスターは不参加で、彼に替わるショーランナーと言われる現場の製作統括者が未発表であることに不安が過るのは、「ビバヒル」のリブート版の失敗があることも大きいのです。

オリジナルの出演者やクリエイターにとって、リブート企画が必ずしも手放しで喜べるものではないというのは、キャトラルやスターの発言からもうかがえます。それでも、ドラマでは過去のヒット作を復活するリブート案件がこのところ増えています。

なぜなら、ハリウッドのスタジオ直下で激烈なストリーミング戦争が起こっているからです。

サブスクリプションサービスが盛況となったいま、3強と言われているのがネットフリックスとアマゾンプライム・ビデオ、Huluです。これにディズニーが始めたDisney+が急ピッチで追い上げ、NBCユニバーサルのpeacockとワーナーグループのHBO MAXも参戦しています。ViacomCBSもParamount+として展開する計画があります。

それぞれが会員の獲得に必死。その鍵となっているのがオリジナルコンテンツであり、手っ取り早く話題をつくることができ、固定ファンの流入が見込めるリブート企画が、トレンドになっているというわけです。
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文=長谷川朋子

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