「正解がない」入試記述問題に強い子に育てるとき、『哲学』が効く理由

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高抽象度のものを現実の方法に落とし込めると有利


阪原:日本では近年、人文科学の分野が縮小していると感じます。僕はそれには反対です。映画の世界でもそうですけれど、たとえば海外の人は、抽象度の高いものを現実の方法に落とし込むということが得意だと感じます。多分それは、自分の頭で考えて自分の哲学が身についているからだと思います。だから、何かを見て感じたことを、自分なりに現実の思考に落とし込むことができる。

永田:たしかにそれはヨーロッパでも感じます。物事には正解がないということが前提なので、自分なりの答えを身につける癖がついているのでしょう。

阪原:日本でも、多くの人が自分だけの考えを持って、自分だけの方法を作っていけばいいと思います。それで、うまくいくものは残っていくかもしれない。それが創造的な社会なんじゃないかなと思います。

永田:たしかに社会の常識や前例に縛られずに、自分なりのやり方をどんどん試して作っていけばいいですね。

天才は、正解を教えるなかからは生まれない


阪原:永田さんが、正解がないなかで、自分なりの答えをどう見つけるかというのは、とても大事な視点だと思います。日本の教育は正解を教えてしまいますから。僕は昔、3年間映画作りの専門学校で教えていたんですが、最後は誰も生徒が来なくなってしまった(笑)。

永田:わかった。阪原さんの授業は正解を教えなかったんですね。みんな正解を知りたくて授業を受けるから、それが示されなかったから居心地が悪かったと(笑)。

阪原:僕は前から思っていました。正解を教える学校から、たとえば芸術の分野であればピカソは育てられるのかということです。天才は、正解を教えるなかからは生まれてこないと思います。

「自分軸」があると差がつく


阪原:
今後の世の中で必要な考え方は何だと思いますか?

永田:まっさらなキャンバスに自分の考えを描く、自分の色をつける、自分の創造物を作っていく。そういったことは、多様化した世界の中では重要だと思います。今後はますます、「決まったこと」は減っていき、社会の常識というのもなくなっていく気がします。10人いたら10人が、それぞれ違う当たり前を持っている世界に向かっているのではないでしょうか。

阪原:まっさらななかに自分の考えを作っていくことが必要ですね。
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文=阪原淳

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