発達障害の息子を東大に入れたシングルマザーが「K教諭」に言ったこと

母・菊地ユキさん(左)と発達障害の診断を受けた息子・大夢くん(右)(本がすき。より)。


K教諭の口から出てくる言葉を聞くうち、菊地さんはさらに暗澹とした気持ちになったという。そして、悪い予感は的中。大夢くんの困りごとはどんどん増えていった。

授業中に教室でおもらしをしてしまったり、体育の授業でマラソン大会の練習中には行方不明になったり。また、別の授業では、突然大きな声をあげ、教諭から理由を問われても答えられず、授業が終わるまで立たされてしまったり。

K教諭からは「甘えは許しません、特別扱いしません」といった連絡が、その都度あった。

「どうしてそうしたのか」を知ることに、時間をかけた


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大夢くん7歳の時、弟と(写真は著者提供)

これまでの菊地さんなら、ここで心が折れてしまっていたかもしれない。でも、このときは違っていた。菊地さんは大夢くんから「どうして、そうしたのか」を、長い時間かけて聞き出したのだ。

果たして、授業を中座してばかりでは集中力の欠如に繋がると捉えたK教諭が「授業中のトイレ禁止」と決めたことが、おもらしの遠因だった。「どうしても我慢できないときは、トイレに行っていいんだよ」と話す母に、大夢くんは「先生の決めたことは守らないといけないから」と答えたという。

授業中の、突然の大声の理由はこうだった。後ろの席の子からちょっかいを出され、それを止めてもらうために何度も小声でお願いしたが聞き入れられず、やむなく大声を出したという。菊地さんが「それをそのとき、先生に話せばよかったのに」と伝えると、大夢くんはケロリとしたようすでこう答えた。

「でも、僕がそう言ったら、後ろの子が先生から怒られるから。僕が立ってれば、それで済むなら、それでいいよ」

問題行動には彼なりの理由があったのだ。菊地さんはそれをなんとかK教諭にもわかってもらいたいと考えた。

〈大夢が有意義な学校生活を送るために、K先生にはなんとか大夢の特性を理解してもらわなければなりません。それに、大夢には、先生が「授業中はトイレ禁止」と言えば頑なにそれを守ろうとするバカみたいな素直さや、ほかの友だちが怒られるぐらいなら自分が立っていればいいと思える優しさだってある。せめて、せめてそこは、わかってあげてほしい……。

「負けてたまるか」

いつもならグズグズ、メソメソと涙してばかりだった寝床のなかで、私はこうつぶやいていました。

K先生への反発心から、私は強い母になる決心をしたのです。〉(本書より)
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