ふるさと納税も寄付の一つ 社会への投資の見極め方

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なので、施策や取り組みの評価は、その成熟度に応じて行う必要があります。また、「ひとり親世帯にどれだけ食糧を配ったか」だけではなく、その家族のくらしの安定が進んだか、また、その活動の担い手がどう成長したかも、評価すべきでしょう。なのに日本では、資金提供者側の価値や効率だけを優先して評価のあり方が与えられてしまっているから、評価について、施策や取り組みの担い手の主体性や当事者性が下がってしまっている。

その背景には、「評価の専門家」と称する人たちが、「第三者評価が大事だ」と言いすぎることがあります。でもそれって、「健康づくりはお医者さんに行かなきゃだめよ」って言ってるのと同じことで、そんなはずはありません。検査や処方は、もちろん医療従事者の仕事ですが、検査データをもとに食生活や運動などの生活習慣を改善するのは、生きている人ご自身の権利と役割です。なのに、専門性や第三者性を強調すればするほど、みんな引いてっちゃいます。

IIHOEが20年以上前から「自分のために、自分でする評価」を支援しているのは、そのためです。自分で設定した目標、例えば「殺処分ゼロにしよう」というなら、すぐにゼロにはならないから、何年かかけてゼロにしていくための道筋を引いていく。まず3割減らして、さらに3割減らしてとと積み重ねて、小さくなっていく。

成果主義でチャレンジを恐れてないか どこに協力するか考える際の評価軸


企業からNPOへの寄付・助成も同じです。「実績のある団体に渡したから安心」か、それとも「まだ解決策が確立していない課題に挑む団体と、リスクを負いつつ一緒にチャレンジしよう」か。

SDGsで問われる社会課題に取り組むためには、行政や企業はNPOと組むしかない。組む相手を選ぶときに、実績だけで評価してしまうと、先ほどの表の右上、規模の大きな団体と、十分に手堅い(いわば「枯れてる」)手法を選んでしまいます。

しかし、創業の精神に照らして、社会課題解決の試行や開発もすべきなら、調査・研究や開発・実装中の相手と組まなきゃいけない。すでに大きなところと手堅く組んでもいいけれど、しかし、小さくても新しい手法でアプローチしようとしているところと組むことが、イノベーションを誘発します。

自治体の施策も、NPOや社会事業家の取り組みも、資金提供者が短期成果主義的でしかないならば、それは補助や助成ではなく、単なる委託です。しかし、成果を約束させられれば、手堅いことしかやりたくないから、難しい課題には挑まなくなってしまう。それは本当に、より良い社会づくりに向けた投資として適切なのかということを、考えていただきたいのです。


川北秀人◎1964年大阪生まれ。87年に京都大学卒業後、リクルートに入社。国際採用・広報・営業支援などを担当し、91年に退職。その後、国際青年交流NGO「オペレーション・ローリー・ジャパン」の代表や国会議員の政策担当秘書などを務め、94年にIIHOE設立。NPOや社会責任志向の企業のマネジメント、市民・事業者・行政などが総力を挙げて地域を守り抜く協働・総働の基盤づくり、企業のみならず、NPOや自治体における社会責任(CSR・NSR・LGSR)への取り組み推進を支援している。

編集=縄田陽介

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