ふるさと納税も寄付の一つ 社会への投資の見極め方

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『ソシオ・マネジメント』10号より

横軸は、施策・取り組みが着手されてからの時間、縦軸は期待される効果や効率の大きさ。

始まったばかりの施策や取り組みは「調査・研究」段階です。犬猫の殺処分を減らすという施策で言えば、犬猫はなぜ放棄されてしまうのかという原因と、その原因に有効な対策の仮説を、調べなきゃいけない。仮説が検証され、「この方法でいけそうだ」という方法を確立するのが「開発・実装」の段階。それを他の地域にも普及・展開する、つまり、和歌山市だけではなくて、大阪市や奈良市にも展開しましょう、というのが「普及・展開」の段階なんです。

「被災された人たちに物資を配りましょう」といった緊急的な手当もあります。しかしそれは、ケガしてしまった人の傷口に絆創膏を貼るということと同じ。「しくみをつくって継続的に対応する」ためには、要因や構造を知り、しくみをつくり、他の地域とも共有するという「調査・研究」「開発・実装」「普及・展開」の3つの段階を経るはずです。

今回の和歌山市のケースも、「こういうことをするのに、これだけお金かかるんです」と言うために、ちゃんと「調査・研究」と「開発・実装」が終わっているはずです。「このままいくとこうなってしまいそうだ」、そこで「この施設を作ると、これくらいの効果が期待できる」という根拠を、説明できるはずです。

一方で、最近、ソーシャル・インパクトという言葉が使われるようになってきていることに、強い危機感を覚えます。NPOや社会事業家に、いきなり成果や効率を求められる。そりゃ無理です。

同様に、NPOへの助成や、行政とNPOとの「協働」が、成果を約束させる「委託」になってしまいつつある事例を数多く見ます。しかし、NPOの取り組みは、効果や効率を問える「普及・展開」段階のものばかりではなく、「調査・研究」段階や「開発・実装」段階のものもあるはずです。

例えば、シングルマザーのお母さんたちが、どのように生活に困窮しているか。食糧配布と言っても、過去1週間にどのようなものをどれだけ食べられたか、たんぱく質やビタミンは足りてるのかを調べないと、何が足らないかわからないまま、ただ集めて送ればよいということではありません。

しかも、新しい調査をちゃんと行わないと、新しい手法の開発はできない。先ほどの表の右上であればソーシャル・インパクトは大きくなりますが、そのためには、誰かが開発した、効果も効率も高い手法を借りてくるか、自分たちで調査・研究から開発・実装を積み重ねるか、どちらかしかない。

実現可能性やバリュー・フォー・マネー(金額に見合った価値)、インパクト評価だとか、言えば言うほど、もうすでに確立された手法に寄せさせることになる。しかし、社会の課題に挑むNPOや社会事業家、そして、くらしの最前線と向き合う地方自治体が、調査・研究や開発・実装しないで、誰かから手法を借りてくるばかりの国にしちゃうことって、持続可能性の向上には反しますよね。
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編集=縄田陽介

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