猫を救うふるさと納税のはずが 寄付の「正しい」使い方

Andriy Blokhin / Shutterstock.com


自分が考えや実績を報告した時に、根拠も問われます。根拠をちゃんと説明できないと信頼されませんし、信頼されないと共感もされません。

例えば、「子どもたちのために食事を提供したい」と言うなら、「そういう子どもは何人いるの?」とか、「土曜日にやります」って言うなら、「なぜ土曜日がいいわけ?」とか、根拠を説明できる必要があります。

「アフリカの子どもたちのところに、お金が集まったら行きます」というのって、緊急性が全然ないし、下手をするとお金がその通り使われない可能性もあるわけです。「アフリカで活動する」という団体にお金を託す時、広いアフリカの中のどこの国で、どんな目的でどのように使うのか、課題は水・衛生なのか、環境保全なのかといったことを決めた根拠と、実際使ってみてどうだったかという結果が、当然問われます。

つまり、施策の根拠と、結果を説明する2つの責任があるという観点から、和歌山市の事例は「やってました」とは言っていても、その説明の根拠があいまいで、しかも、そもそも結果を出してなかったという、2つの意味でひどいわけです。

(2)コンプライアンス:「法令・規則」と「期待」に応える責任


2つめは、手続き面での適正性。コンプライアンス(compliance)という言葉を、日本では「法令遵守」などと訳してしまう人が多いですが、「comply」の「-ply」ということばは、「応える」という意味。コンプライアンスとは、相手に合わせて(「com-」)応える(「-ply」)ということです。

では、コンプライする対象は何か。法令や規則だけじゃなくて、相手、ひいては社会の期待にも、やっぱり応えなければいけないですよね。

法令や規則を守るのはもちろん基本的な義務ですが、ここで言う規則とは、自分の団体の規約・定款や、相手との約束を文書にしたものである契約も含まれます。

法令や規則に加えて、「どうせ良いことをするんだったらお金も効率的に使ってね」とか、「緊急性の高いことに使ってほしいよね」とか、「管理費の比率を抑えてね」といった、「上手に使ってね」という「期待」もあるわけです。

法令と規則、略して「法規」と、併せて「期待」にも応えること、この2つの責任に「応える」ことを、コンプライアンスと言います。

(3)ソーシャル・レスポンシビリティ:環境、健康・人権、安全、コミュニティへの社会責任


3つめが、社会に対する責任(ソーシャル・レスポンシビリティ)です。

状況について視野を拡げて考えた時に、特定のことだけじゃなくて、バランスを考えなきゃいけないというのが、社会(的)責任です。企業で言えば、自社が儲かるために、気候変動や人権に悪い影響を与えていないか。NPOでも、アフリカで衛生や教育のプロジェクトを実施した結果として、「衛生はよくなったけど、地域の自然環境は守られたのか」ということです。

このように、アカウンタビリティ(根拠と結果の説明責任)、コンプライアンス(法規と期待に応える責任)、ソーシャル・レスポンシビリティ(社会責任)という3つの責任は、行政はもちろん、NPOにも、そして最近ようやく、ESGの観点から企業にも、期待されています。

目的を指定した寄付を募ったら、流用は原則不可


「困っている子どものために使います」と街頭募金したら、「困っている子どもはどこにどれだけいるんだ」「どう使ったんだ」ということに対する受託者責任が発生しています。

当たり前の話ですが、目的を特定して寄付を集めたら、原則として他に流用してはいけない。アメリカで寄付に関するスキャンダルというと、だいたい流用です。
次ページ > アメリカでの寄付流用の例

編集=縄田陽介

ForbesBrandVoice

人気記事