猫を救うふるさと納税のはずが 寄付の「正しい」使い方

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クラウドファンディング形式のふるさと納税で資金調達する自治体の事例が増えてきた。動物の殺処分を減らすなど動物愛護活動のためと謳われたメニューはひときわ人気を集めている。

一方で、寄付した人の期待と実際の使途との間にギャップが感じられるなどのトラブルも見られるようになった。

2020年9月、猫の殺処分ゼロを目指すため、去勢手術の設備拡充や備品購入などを掲げて和歌山市が募ったふるさと納税などへの寄付(総額約2790万円)の一部が関係部署の自動車保険費や印刷代などにも使用されていたと市議会で答弁され、後にそれが撤回されるという問題が起こった。

寄付は動物愛護センターの整備などにも充てられたが、実際に保護した犬猫の不妊去勢手術の実績も2020年の11月末までで54匹と、集まった寄付額から感じられる大きな期待からはかけ離れた印象を受ける。

今回の騒動を例に、企業やNPOの社会責任に取り組んでいる川北秀人さん(IIHOE(人と組織と地球のための国際研究所)代表者)に、公益のための寄付集めのあり方や倫理について聞いた。


寄付も公金 あくまで「預かったお金」


まず、寄付も税も、「お預かりしているもの」ですよね。

例えば、街頭で赤い羽根の募金している人にお金を渡したら、その人や共同募金会のものになると思ってないじゃないですか。いわば、社会のものになった。つまり、税金だけでなく、寄付も公(おおやけ)のためのお金、公金ですよね。街頭募金してる人に渡したけれど、その人を介して、公のために使われるお金を、預けたと思っているわけです。

信託という言葉があります。文字通り信じて託すること。裏返して言えば、渡された側は「信」頼されているから「託」されたわけです。受託された責任が、税金を受け取った行政にも、寄付を受け取った非営利セクターにもあるわけです。それが「fiduciary duty(受託者の義務)」です。

銀行で言えば、「預かったお金を減らさず返す」だけでなく、「社会的に見て適切に運用する」という2つの責任がある。預金が適切に管理されているか、さらに、その運用先が適切か。要は「汚いことをやって儲けたお金じゃないよね」という、受託者としての責任があるわけです。

我々NPOも、そして行政も、預かったお金について、無駄遣いしないだけじゃなくて、ちゃんと成果を出すことも託されている。先日の和歌山市の件がけしからんのは、会計管理もなってないし、使い途もなっていない。受託者責任が全然果たせてないということなんです。

公金を預かる組織が果たすべき3つの責任


NPO・NGOには、公金を預かる組織として果たすべき3つの基本的な責任があって、これは行政も同じです。



(1)アカウンタビリティ:「根拠」と「結果」の説明責任


アカウンタビリティ(accountability)は、日本ではよく「説明責任」と訳されますが、そもそもは「カウントできる」という意味です。

例えば、「今日飲み会やるけど、お前来る?」と聞かれたときに、「はい、行きます」と答えると、「じゃ、カウントしておくね」となる。ここでいう「カウント」は、単に「数えておく」というより、「当てにしておく」ということですよね。

つまりアカウンタビリティには、「結果責任」も問われています。「できた?」という問いに対して、できていても、できてなくても、ちゃんと答えなきゃいけない。
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編集=縄田陽介

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