コロナ禍の困りごとを政府につなげ! 青年経済人たちによる緊急提言の内幕

日本青年会議所の第69代会頭石田全史


しかし、その後もコロナの勢いはまったく衰えない。欧米各国の主要都市が次々とロックダウンという大胆な策を打ったのとは対象的に、日本政府はそれだけは何とか避けようとしていた。経済を優先し、人命を軽視しているという声が多勢を占めていく。

「東日本大震災のときも、今回のコロナショックも、共通しているのは、誰も先がわからないのに、科学的根拠のない発言が拡散されていくことです。ああするべきだ、こうするべきだと希望的観測で物事を考えると、得てして結果は裏目に出るものです。自分とは違う意見に対して批判的になり、不満だけを募らせていく。危機的な状況のときには、まず、現実を受け止めることです。1カ月先、2カ月先、3カ月先とたつうちに状況は変化します。さまざまな学説が出てきたなかで、行動変容したほうがいいのです」

3万人を超える巨大組織をけん引する


日本青年会議所の名前は誰もが聞いたことがあるかもしれない。しかし、どんな運動を推進し、組織の頂点に立つ会頭がどんな役割を担うのか、詳しく知る人は少ないのではないだろうか。

「青年会議所は117の国と地域が加盟する国際組織で、約17万人のメンバーが、世界各地のLOM(LOCAL ORGANIZATION MEMBER)と呼ばれる地域の会員会議所に所属しています。活動の主な目的は、よりよい未来の構築と次代を担う人材の育成。入会資格を要するのは20歳から40歳までという決まりがあります。日本には約3万人の会員がいて、692のLOMがそれぞれの地域に根差した活動を行っています。

日本青年会議所はその調整機関としての役割をもち、LOMの中から選出された代表が日本青年会議所に出向し役員を務めます。組織形態は単年度制で、1年間で役員が入れ替わります。つまり、与えられたその1年間に、各LOMの活動が円滑に進むためのビジョンを示すのが会頭の仕事です」

活動の成果の共有を目的とし、日本青年会議所では年に数回大規模な大会を開催する。そうした大会は世界の青年会議所でも行われており、年に一度、全世界のメンバーが集まる世界会議も開催される。

しかし、このコロナ禍では国際大会はおろか、国内大会も開催できない。そんなとき、会頭は、メンバーのモチベーションをどのように上げ、自らのミッションを遂行していったのだろうか。

「変化に応じて、しなやかに対応していくことが大切です。今年は多くの活動がオンラインに切り替わりましたが、それでも日本青年会議所は大きな成果を残すことができたと自負しています。確かに当初の計画通りの活動はできませんでしたが、困難のなかでも日本各地の多くのLOMは前向きかつ自主的に事業に取り組みました」

日本青年会議所に所属する会員の約9割は中小企業の経営者。ほかに大企業の役員、士業、それに政治家までも在籍している。それぞれが本業をもちながら、自分の強みを生かして社会貢献活動に参加する。地域に根差した活動とは、地域の課題を解決するという意味であり、必要であれば、目的を達成するために自治体、現地企業と連携することもある。

日本青年会議所はこれらのLOMの活動からメンバーが感じたことを、政府に直接届けるプラットフォームをつくり上げた。地域社会をよく知る青年経済人の声は、国も望んでいる。非常事態であればなおさらだ。
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文=明石康正 写真=後藤秀二

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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