東日本大震災から10年 地震で家が傾いたときの公的補償と保険について考える

seksan Mongkhonkhamsao/Getty Images


ということで、現在は公的補償として被災者生活再建支援法が整備されていて、地震で家が傾いた場合も、中規模半壊以上の損害と認定されれば支援金を受けられる可能性が高い。ただし、被災者生活再建支援制度は、10世帯以上の住宅全壊被害が発生した市町村等が対象になる点には注意したい。

それでも、図表を見てわかるように、決して十分な額を受け取れるわけではない。あくまで被災者が生活再建するのを「支援」する位置づけのため、自前で生活再建をできるようにすることが前提になる。

地震保険なら1度の傾きでも「全損扱い」


結局、公的補償で足りない部分は、自分で備えるしかない。家を買って手元資金が足りないようなら、保険を活用するのが合理的だ。

意外に知られていないが、地震で建物自体にはほとんど損害がなくとも、地盤沈下や液状化によって家が傾いた場合、損害の程度によっては「地震保険」で補償される場合がある。

図表2は木造一戸建ての場合の基準だが、わずか1度超の傾きで「全損扱い」となり、契約金額の100%を受け取れる。

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出所:「地震保険ご契約のしおり2021年1月改定版」P.8より筆者作成

ちなみに、これは東日本大震災以降にできた基準だ。それまでは、地震振動で発生した揺れによる建物の主要構造部の損害に着目した方法で調査して判定していた。阪神・淡路大震災当時の基準では、「全損扱い」になるには3度超の傾きが必要だったのだ。

東日本大震災では、関東各地で地盤の液状化現象が起き、たくさんの建物に被害が出た。木造建物および鉄骨造建物(集合住宅を除く)の液状化による損害についての調査方法を定めることで、迅速で的確な保険金支払いができるように、地震保険が改定された経緯がある。

液状化による損害も地震保険の補償対象となることのほか、あまり知られていないことに、地震による火災については「火災保険」では補償対象外ということがある。

大きな地震が発生すると、建物が倒壊していて通常のようには消火活動が進まない。また、電気が復旧して通電した際には火事が起きがちだ。そのため、通常の火災リスクとは切り分けて、地震による火災は「火災保険」ではなく「地震保険」の補償範囲となっている。

思い返すと、阪神・淡路大震災の際、神戸市長田区は街の大半が焼失した。あの火災も、「地震保険」に入っていたらきっと補償されていたのだろう。

震災メモリアルな今年は、地震保険についてあらためて見直してみるのもいいかもしれない。

連載:ニュースから見る“保険”の風
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文・図=竹下さくら

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