暗号化メッセージアプリ「シグナル」、利用者急増で一時停止

Chesnot/Getty Images

暗号化されたメッセージングアプリの「シグナル(Signal)」は、より強固なプライバシーを求めるユーザーがワッツアップ(WhatsApp)などから離脱し、新たに利用を開始したことで、新規ダウンロード数を急増させた。

その結果、トラフィックの集中が起こり、1月15日朝にはメッセージの送信に時間がかかったり、全く送信されない現象が発生した。シグナルは声明で、「ここ数日、新たなサーバーと容量を追加してきたが、予測を上回るトラフィックが発生した」と述べた。

シグナルのメッセージは、エンド・ツー・エンドで暗号化されている。送信者と受信者以外の誰も(シグナル社でさえも)、ユーザーのメッセージの内容を読むことは不可能だ。このアプリが、App Storeのチャートでトップに躍り出た背景には、ワッツアップが今後、親会社のフェイスブックとユーザーのメッセージを共有するようになるという噂が出回ったことがあげられる。

ワッツアップはその後、プライバシーポリシーの変更についてユーザーに通知し、フェイスブックと「ユーザーのメッセージを共有することは無い」と述べた。ワッツアップは、ユーザーが企業アカウントとチャットする場合に限って、「ユーザーのデータ」をフェイスブックと共有すると述べている。

同じタイミングで、ドナルド・トランプ大統領のSNSアカウントが凍結され、保守的なSNSアプリの「Parler」がストアから追放されたことを受け、巨大テック企業に対する懸念が生じた。保守派の人々は、アップルやグーグルなどの大手が関与しない、プライベートなコミュニケーションの場を探している。

シグナルは、Moxie Marlinspikeというペンネームを用いるセキュリティ研究家のMatthew Rosenfieldによって2013年に設立された。このアプリは何年も前から、ジャーナリストや一部の活動家の間で人気だったが、ここ最近、急激に認知度が高まった。

シグナルは、ワッツアップの創設者であるブライアン・アクトンの出資を受けて2018年に非営利団体化された。アクトンは、ワッツアップのマネタイズを急ぐマーク・ザッカーバーグらの方針に反発し、2017年にフェイスブックを退社したことで有名だ。アクトンはその後、英ケンブリッジ・アナリティカ社によるフェイスブックのユーザーデータ不正使用スキャンダルの発覚後に、#deletefacebook(フェイスブックを消去せよ)とツイートしていた

イーロン・マスクやジャック・ドーシー、エドワード・スノーデンらもシグナルを支持していることで知られている。

シグナルのメッセージの秘匿性は、プライバシーの専門家には称賛されているものの、警察は、このアプリが過激派やテロリストの捜査を妨げることを懸念している。米国の極右の活動家たちも、主流のSNSから締め出された後、秘匿性とソーシャル機能を兼ね備えた「テレグラム(Telegram)」などのアプリに群がっている。

編集=上田裕資

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