1つは、コロナ禍で昨年4月から11月までの間に解雇や休業や退職を余儀なくされた人数をみると、女性が男性の1.4倍にのぼったという事実(12月4日付、日経新聞)。もう1つは、昨年10月の自殺者数が、男性は前年同月比22%であったのに対して、女性は83%増だったと言う事実(12月17日付、Forbes JAPAN)。
もちろん、被雇用者や自殺者の総数ではもともと男性の方が多いため単純比較はできないが、コロナ禍で就業分野に偏りのある女性が、社会的弱者として改めて浮き彫りになったことは否めない。
これらのデータは、安倍政権下で女性の就業率が大幅に向上し、出産や子育てを原因に離職する女性が多いため30代女性の就業率が急落することから生まれる「M字カーブ」も改善した、とされる昨今の報道とは異なる現実を我々に突きつけている。
確かに、役員を除く女性の雇用者数は、13年から19年までに13%増えた。ただ、増加した307万人の雇用者の57%を非正規が占め、その多くが特定の業種に偏っており、男女の賃金格差も埋まることがなかった。そして新型コロナの感染拡大で、その多くが働く機会を失ったと見るのが適当だろう。
ジェンダーギャップと教育
教育は、この課題とどう向き合うべきなのか。教育業界の現場にいる人間として、また小学生の女児をもつ母親として、私はこの問いから目を背けることができなくなっていた。
世界経済フォーラム(WEF)が毎年発表するジェンダーギャップランキングにおいて、2020年、我が国が前年よりさらに11位順位を落とし、参加153カ国の中で121位に甘んじたことは、読者の皆様であれば既にご存知であろう。先進国ではほぼ最下位である。
これまで政府がとってきた政策は、上場企業の取締役に占める女性割合の公表を義務付けたり、保育施設の充実をはかったり、男女の育児休暇を推進したりするもので、いずれも効果がなかったとは言えない。しかし、依然として政治や経済における女性の進出は遅く、上述のような現実が日本社会には歴然と存在する。なぜか。