「女子中高生のSTEM教育が重要だ」と提唱する教育関係者は多い。確かに、15歳時の学力を比較するOECD国際PISAテストのデータを見ると、ジェンダーギャップランキングとの明確な相関関係が浮かび上がってくる。
以下は、PISAの数学における女男差(女子の平均点から男子の平均点を引いたもの)と同ランキングを比べた表である。女男差が大きい国、つまり女子の方が数学のできる国が、ランキングの上位を独占していることが見てとれる。一方我が国では、近年改善傾向にあるとはいえ、女子の方が未だに10ポイント男子を下回っている。女子のSTEM教育に力を入れることは、一定の効果が期待できそうだ(ただしニュージーランドなどは、ポイント差では日本とほぼ変わらないにも関わらずランキング上位に食い込んでいることは興味深い)。
OECD Data “Mathematic Performance(PISA)2018” & World Economic Forum “Global Gender Gap Report 2020”
また、こんな興味深いデータもある。2015年のデータではあるが、日本においては高等教育(大学・大学院・高専・短大を含む)の経済的リターンの男女格差が9倍と、OECD諸国の中でもダントツに大きいことを示すものだ。
4年制大学進学率そのものは、過去30年間で男女差が20%ほどから10%以下へと縮まっており、女性の高等教育進学率は2018年にはじめて50%を超えた。しかし、大学へ進学しても女性が就業しない、あるいは賃金が低いため、経済的リターンには表れてこない、という事実である。
出所:OECD Statistics “Education at a Glance2018”
大学で学ぶ内容にも関係がありそうだ。学部別に見る女子学生比率では、家政(90.2%)、人文科学(65.3%)、保健(62.3%)などが高く、工学部は顕著に低い(15.4%)。
ただしこの割合だけを見ると、諸外国に比べ極端に低いと言うわけでもない。実は米国でも全国の工学部に占める女子学生比率は19.7%であり(2015-16年時点)、英国でも17.6%に過ぎない(2016-17年時点)。工学部の女子学生を増やせばいいのかというと、そう単純でもなさそうだとうことがこれらのデータから理解できる。
ジェンダーギャップと社会通念
上記のデータをもう少し掘り下げて見ていくと、ほかにも興味深い現象が浮かび上がる。トップ大学の女子学生比率を見ると、日本と米国との間には圧倒的な開きがあるのである。Wikipedia上の情報によれば、理系の最難関校の1つであるマサチューセッツ工科大学(MIT)は2015年時点で45.7%。いわゆるアイビーリーグ校でもブラウン大学で同年41%、プリンストン大学で38.5%であった。東大工学部が8.9%であるのとは比較にならない。