また、各国は、ESG指標の新たな基準値に焦点を当て、企業が長期的かつ持続可能でインクルーシブな投資に取り組むためのインセンティブを導入することで、金融の安定化に力を入れる必要があります。先進国の中で、フィンランド、スウェーデン、ニュージーランド、オーストリアなどの国は、比較的その体制が整っていると言えます。特筆すべきは、ここで米国が上位に入っていないことで、レポートでは、最も体制が整っていない国と評価されています。
世界競争力レポート特別版2020:復興を目指す各国の取り組み(イメージ:世界経済フォーラム)
4. 未来のイノベーションへの投資
第四次産業革命のテクノロジーは、パンデミックからの復興を支えるソリューションを提供する上で不可欠です。しかし、二酸化炭素排出量の抑制やインクルーシブな社会保障の提供などの分野では、テクノロジーの適用が遅れています。米国、スウェーデン、日本が例示しているように、こうしたテクノロジー導入に向けた官民連携を支援するには、さらなる努力が必要です。
政府はまた、科学、技術、イノベーションの課題への取り組みを支援し、実践を担う公的機関のネットワークを構築することで、「未来の市場」への新たな投資や雇用創出を進めることができるでしょう。これは、フィンランド、日本、米国、韓国、スウェーデンの例を見ても明らかです。
例えば、米国の国立衛生研究所(NIH)は、抗生物質の創薬、希少疾患対策、そして、最近導入が開始された新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発などの分野で、長年にわたり新たな市場を開拓してきました。こうした実績は、大学、研究センター、有望なスタートアップ企業のような豊かな研究開発エコシステムを支援する、助成金など各種資金調達スキームによって実現するものです。
最後に、パブリックセクターには、優れた創造性を育成し、企業が多様性、公平性、包摂性を受け入れ、あらゆる層の社会的ニーズを満たせるように、インセンティブを与える役割を果たすことが期待されています。レポートで評価された国の中では、中国、スウェーデン、ニュージーランド、米国がこの分野で傑出しています。
カナダの「50-30チャレンジ」は、企業の役員や上層部のジェンダーパリティ(ジェンダー公正)実現や、少数民族の割合を30%に引き上げることを目指す、政府、企業、ダイバーシティ組織の連携によるイニシアティブです。
パンデミック後の経済を見据えた「成長」の再定義
コロナ危機は、生産性が高く、持続可能で、インクルーシブな経済の改革が、いかに重要であるかを明らかにしました。政策立案者にとっては、今こそが、人々と地球全体に利益をもたらす新しい経済システムを構築する絶好の機会であり、その責任があります。
この経済改革を現実のものとするべく、世界経済フォーラムは、2030年までに10億人へより良い教育、スキル、雇用を提供することから、GDPを超えた経済目標の提唱や、未来の市場の実現加速させることまで、官民両セクターと連携し、取り組みを続けています。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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