経済・社会

2021.01.30 09:00

競争力のある経済を再建するには? 世界経済フォーラムがレポートを発表


2. 教育、就業スキル、ケア領域の支援


世界経済フォーラムの「仕事の未来レポート2020」で明らかになったように、新型コロナウイルスの感染拡大により世界の失業率は急増し、労働力の自動化へのシフトも加速。2025年までに、15の産業と26の国で8500万人の雇用が失われる可能性があります。

この変化に対応し、労働力のニーズを満たすために、各国政府は、労働法と社会保護を再考しなければなりません。ドイツ、デンマーク、スイス、英国では、適切な労働者保護と新たなセーフティネットモデルを組み合わせた措置をすでに講じています。

同時に、人間と機械による分業という新しい形態に適応した「未来の市場」では、2025年までに9700万以上の新たな雇用が生まれると考えられているため、政府は、教育カリキュラムの見直しを急ぐ必要があります。オランダ、デンマーク、スイス、フィンランドは、雇用市場におけるこのような変化に対応した学校のカリキュラムを整備するため、将来見込んだ取り組みを進めています。

2025年までに、働く人の50%以上がリスキリング(再訓練)を必要とすると言われています。データ分析やAI(人工知能)、機械学習など、需要の高いスキルへの投資を拡大し、失業中の人や失業リスクの高い人を対象とした、リスキリング(再訓練)やアップスキリング(スキルの向上)の取り組みに、国は力を入れなければいけません。

シンガポールやフランスでは、個人に訓練補助金を与える新しい支援を試みています。フランスでは、国内のすべての労働者を対象に、あらゆる分野の職業訓練に対し、年間最大800ユーロを支給しています。

また、パンデミックは、発展途上国の人口増加問題や、先進国における高齢化へ対応するために必要な、ヘルスケアシステムの改善に遅れがあることを明らかにしました。経済改革するにあたり、現在と未来の医療のニーズを満たすために、高齢者ケア、保育、ヘルスケアのインフラを増強することを忘れてはいけません。スウェーデン、フィンランド、カナダでは、比較的多くの公的資金がこういった領域に割り当てられるようになってきています。

3. 安定した市場の構築


2008年〜2009年の金融危機以降、世界経済は比較的安定性を保っていたものの、企業の債務リスクの増大や金融システムへのアクセスの不平等など、パンデミックの打撃を受ける前から脆弱性は露呈していました。

パンデミックとそれによる景気の低迷は、あらゆるセクターにおける市場の集中を悪化させました。各国は、参入障壁を下げ、競争を強化し活気あるビジネスモデルを構築するため、競争と独占禁止の枠組みを再考すべきでしょう。カナダ、フィンランド、中国、米国は、現在これらの分野で比較的成果を上げていますが、新しい経済の到来に備えて、すべての国がこの分野の規制を改善しなければなりません。
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文=Saadia Zahidi, Managing Director, World Economic Forum

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