挑戦する人と挑戦する企業をつなぐ、Forbes JAPAN 初の採用ブランディング

ターミナル駅で辛抱強く客を待つ、無数のタクシー。街で走る姿を見かけても、後部座席に乗客の姿はない。事業縮小、廃業、解雇......新型コロナウイルスは全国のタクシー事業者をも窮地に陥れた。

こうした光景を見るにつけ、「遠くない未来、この業界は厳しいかもしれない」と感じたのは、おそらく筆者だけではないだろう。

だが、徳島発のスタートアップ企業・電脳交通の存在を知れば、そのイメージはきっと一変する。

創業者であり、“メジャーリーガーを夢見た”近藤洋祐の経歴をざっと紹介する。アメリカで夢に破れたあと、祖父が徳島で経営していた吉野川タクシーに入社し、2012年に同社の代表取締役に就任。その傍ら、「タクシー業界、事業者に長年はびこる課題の数々を、テクノロジーの力で解決すべく、DXを浸透させたい」と考えるようになった。

こうして2015年に吉野川タクシーとは別で起業したのが、現在「クラウド型配車システム」や「コールセンター代行サービス」を全国のタクシー事業者に向け展開する電脳交通だ。

2020年10月には、三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイなどを引受先とした総額5億円の資金調達を実施。名だたる企業から事業の成長性、将来性にお墨付きをもらった格好だが、これは当然、近藤だけの力でつかみ取ったものではない。

今回は、会社の屋台骨を築き上げた二人のボードメンバーについてご紹介したい。

徳島から、“地域活性”という夢を見続けたCTO


創業ストーリーを語る上で欠かせない人物がいる。CTO・坂東勇気である。もし近藤が、自らの事業構想を彼に話さなければ、今、電脳交通は存在していなかった。

坂東は2010年に東京から故郷へ戻ってきた、いわゆるUターン組。数々の大手IT企業で腕を磨いてきたフルスタックエンジニアとして、会社経営者として、そして、地元のエンジニアカルチャーを盛り上げる立役者として......徳島では名の通った存在となっていた。

そんな彼に、近藤は電脳交通のコア事業である「クラウド型配車システム」や「コールセンター代行サービス」の構想を持ち掛けた。2015年初頭のことである。坂東が当時を振り返る。

「かつて在籍していたゼンリンデータコムで、位置情報や動態管理システムに関わっていたんです。ですから、近藤の話を聞いてすぐに開発イメージが浮かび、『できる』と即答しました」(坂東)

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CTO 坂東勇気

近藤とタッグを組んだ理由は、ただ単に自らのスキルセットが事業とマッチしたからだけではない。地域経済や地域交通に役立てる事業であることが彼の背中を押した。

市場の縮小・従業員の高齢化・人手不足など課題が山積していたタクシー業界。逆境を乗り越えるために、最も必要とされているのがデジタル化の推進である。

しかし、全国のタクシー事業者約6000社のうち約7割がタクシー保有台数10台以下の小規模事業者であり、数千万円から数億円におよぶ最新のクラウドシステム導入など夢のまた夢。多くの事業者が旧来の仕組みのまま、現場を回している。

地方の中小企業でも導入できる価格帯で、高齢ドライバーにも使いこなせるSaaSを作りたい──そうした近藤の熱意が、坂東の心を突き動かした。

ビジネスパートナーとして出発した二人。坂東が作ったプロトタイプを、近藤が所有するタクシー会社で試用し、UI/UXをひたすら改善......この繰り返しを経て、数カ月後にはサービスの土台が完成、2015年12月に電脳交通を創業した。

スタートから数年の間に事業エリアを西日本一帯に拡大、1.5億円の資金調達の実施など躍進を続け、その足取りは順風満帆に見えた。

一方で坂東は、会社の“脆弱さ”に気づいていた。

「ビジョンやプロダクトは良質なものの、どうしても“カリスマ経営者が率いる地方企業”、のまま終わってしまうかもしれない。『このままでは大企業に買収されてしまうのでは』と怯えた時期もありました」

しかし、2019年3月、彼の憂慮は一気に払拭される。

東証一部上場企業IDOM(旧:ガリバーインターナショナル)で執行役員を務めていた、北島昇を取締役として迎え入れたのだ。

“雑草”COOは時に、CEO・CFOのように屋台骨を築き上げた


「北島が来てから社内の空気が一変しましたね。急激に“いっぱしの会社”らしくなった」(坂東)

11年間在籍したIDOMでは、執行役員として新規事業、人事、デジタルマーケティングなど幅広い部門のトップを歴任。日本初となる中古車乗り換えサブスクリプション「NOREL」をはじめ、革新的なサービスを世に送り出してきた、それが北島だ。

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COO 北島昇

百戦錬磨の彼が、なぜ地方のスタートアップ企業に籍を転じたのか。理由を問うてみると、こんな答えが返ってきた。

「初めて近藤に会った日、いきなり『貴方は雑草ですね』と言われたんです(笑)。「大手企業の役員」と、多少は良さげな経歴に見えますが、実は大学卒業後に起業した会社を8年半で潰していて、前職でも紆余曲折はあり、『やり切れていないこと』を多く抱えていた。だからこそ、面と向かって言われて正直とても驚きました。と、同時に『経歴ではなく、人柄で自分を見てくれているんだ』と嬉しくもあり。

徳島やMaaSのスタートアップ、というタグにも当然惹かれたんですが、今思い返すと、近藤の『雑草』という一言が刺さったから、今ここにいるのかもしれない」(北島)

電脳交通の一員となってから、まず北島が着手したこと。それは、社員全員との1on1ミーティングだった。過去の系譜やカルチャーを充分に理解し、リスペクトした上で、北島は「組織としての筋トレ」を開始する。

具体的には、バリューの策定から人事制度策定、組織構造やサービス定義、営業手法の見直し、新規事業開発などCOOでありながら、時にCEO、CFOの立場に成り代わり、大鉈を振るった。

「”べき論”で踏み込みすぎて組織が吹き飛ばないようにする絶妙なハンドル裁きには、結構自信があるんです。もちろん忍耐を強いられることも多々あります。でも『メンバーの言葉遣い』や『リーダーの目つき』の変化に気づき、現場のレベルが1ミリ1ミリ上がっていることを実感すると、それまでの苦労が吹き飛ぶぐらいに嬉しいんですよね」(北島)

「働き手」が使えないものをつくっても意味がない。ちゃんと、声を聴く


入社以来、北島は徳島・東京の2拠点生活を送っている。休日はおおむね、家族の暮らす東京で過ごす。

「飛行機だと、徳島-東京間の移動時間は約1時間。早朝便に乗れば、その日は丸1日徳島でも東京でも仕事ができます。不便に感じることはほとんどありません。むしろ、移動の在り方、会社組織の在り方、働き方が変わろうとしている中で『分散型の働き方』を先駆けて実践している自負がある。

東京のほか、大阪や京都にも社員がいるんですが、TPOに応じて対面・オンラインを使い分け、業務を遂行できているのは、そもそも徳島生まれの会社でそれを当然のようにやってきた文化があるからなんですよね」(北島)

加えて北島は、地方に拠点を持つ最大のメリットは「経営・開発・コールセンターなどの機能を1つの場所に集約できること」だと強調する。経営層が指揮を執るすぐ横で、開発やサービスパッケージの企画がなされるこの環境こそが、サービスの品質を迅速に向上させる“好循環サイクル”を生み出しているという。

実際に開発部門では「自動配車システム」「配車データ解析基盤解析」「地域交通ソリューション」「エンタープライズ版」などの開発プロジェクトを手掛け、そのすべてにスピード重視型のアジャイル開発を採用。2019年には、既存サービスの改修を含め、実に600もの案件をリリースしている。

2020年12月現在、全国27都道府県のタクシー事業者が導入している電脳交通のサービス。創業以前からサービス構築に力を注いできた坂東は、常に『タクシー事業者による事業者向けのサービスであること』を意識して開発に取り組んできたという。

「初めに近藤から事業構想を聞かされた時、唯一『アプリではなく電話をベースにしている』点について、エンジニアとして違和感があったんです。しかし実際には、配車アプリ利用者はタクシー業界全体の配車のうちわずか2%しかおらず、残りの98%が電話で配車予約をしていると知り、ユーザーのみならず、事業者の立場に立ったサービスなんだと腹落ちしました。

私自身、Uターンしてみて『地方経済にとって最も大切にすべきは、事業の担い手であり、働き手』であることを痛感していましたし、納得してサービスづくりに邁進することができました。最先端の技術を追うよりもまずは事業者に寄り添う姿勢で、タクシー業界のDX浸透を目指していきたいですね」(坂東)

超高齢化、免許返納......タクシーはMaaSにおける「コア」となり得る


冒頭でも話したが2020年10月、総額5億円の資金調達を実施した。同社が大手企業から注目を集める具体的な理由は、どこにあるのだろうか。

「地方交通が衰退の一途を辿り、少子高齢化が進む中、ドアtoドアで移動できるタクシーは、今やMaaSを実現させるために必要不可欠な存在です。

その業界の一員である私たちの最大の武器は、卓越した配車システムの開発・提供など、課題解決をしながらシステムをアップデートできる機動力。『移動の未来を変える』ポテンシャルに、最も期待を寄せていただいているのではないかと」(北島)

業界全体のDXや新規事業を推進する一般社団法人X Taxi(クロスタクシー)の設立、クラウド技術とオペレーションノウハウをパートナー企業へ提供する「クラウド共同無線パートナーシップ制度」の開始、島根や広島での実証実験参画──逆風吹き荒れるコロナ禍においても、精力的に動き続けた電脳交通。

移動の在り方が変容する今、電脳交通として最も注力すべきは、営業力と開発力の強化によるトラクションの最大化だと北島は語る。

「スマートフォンの誕生が1つのエポックメイキングとなったように、3年後、老若男女問わず『電脳交通ができて便利になったね』と言われる状態にする。まずはそれが目標です」(北島)

新しい分野を切り開くよりも既存の課題を解決していくことに心血を注ぎたい、と口を揃える二人。MaaS浸透のカギを握る、彼らの奔走はまだまだ続く。

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