世界初ダンス・プロリーグを立ち上げた、Dリーグ神田勘太朗COOの勝算

神田勘太朗 DリーグCOO (C) SPREAD


もちろんダンス界も新型コロナとは無縁ではなかった。ライブも、振り付けの仕事も、国際的イベントもなくなった。

「まさに冬の時代。それでも(神田が主催する「ダンスアライブ」の舞台である)『国技館で踊りたい!』という子どもたちがいる。やるしかない。オンラインでダンスバトルができないか。今年の4月以降もどうなるかわからない。昨年はコロナ禍に、ダンスバトルができるアプリを半年で作ることに挑戦。今年はさらにテック分野にチャレンジしていく」と、決して振り返らない。

最新テクノロジーで「新しいスポーツ」を体現


10日の開幕は完全無観客、オンラインでの視聴のみ。しかし、それは一局の地上波に依存する従来型のオンエアではない。D.LEAGUEオフィシャルアプリ、ソフトバンクの5G LAB、ABEMA、GYAO!、スポナビ、ニコニコ、U-NEXT、ダンスチャンネル、スカパー!など既存のプラットフォームを多数活用し、より多くのファンにリーチする手法を選んだ。

神田氏はもともと、映画『レディ・プレイヤー・ワン』の世界観はすぐに現実のものとなると公言し、ダンスを魅せるために、5Gなどの新技術にも着目してきた。リーグ立ち上げに際して、最終的にはトップパートナーにソフトバンクを着地させた。

開幕戦では同社の5G LABを活用し、ステージを真正面から臨場感たっぷりに魅せるソフトバンクのアプリ「VR SQUARE」で提供。かつ今回は4種類の好きな画面が選べる多視点映像を「FR SQUARE」で具現化。リーグ・スタート時から無観客試合とし、5Gの最新テクノロジーを活かした舞台を創造してみせた。コロナ禍においては「無観客で5Gを活用」、私が昨年から提言しているソリューションだ。

「配信は5G、6Gが当たり前になる。あの映画でひとつがっかりなのは、大きなゴーグル(劇中、主人公がVR空間にログインする際に使用)。自宅であんな重いヘッドギアはしないですよね(笑)。あれをどう簡素化するか……。テクノロジーのほうこそ、早く本気出してくれ、早くオレに追いついてくれ!と思ってます。ダンサーのモーション・データも取り始めて、その活用はすでに考えています。ダンサーではない一般の方も踊れるような時代をつくりたい」と、将来に向けて壮大な構想を抱いている。


(C) D.LEAGUE 20-21

「私は踊る時間を『ピースタイム』と呼んでいるんです。ダンスでバトルはしますが、そもそも踊っている時間は夢中になっているので戦争について考えたりしないですよね。世界中で人々の踊る時間が増えるほど、世界は平和になる。だからピースタイム。ダンスがある人生を当たり前にする、ダンスがないと『世界はつまらない』にしたい」と彼の熱量が低減する兆しさえない。

「ダンスはいまの停滞している日本のすべてを吹き飛ばすほど強力ですから」

これだけ人生を捧げてきたダンス業界ながら、あと10年で後輩に託し、身を引くのが人生設計でもある。

「50歳になったら……と考えているんです。イーロン・マスクを含め、なぜ成功者はみな宇宙を目指すのかと考えた結果、『世の中の理を知ってから死にたい』からだと思うんですよ」

もちろん、D.LEAGUEはまだ歴史的開幕戦を終えたばかりだ。「埋めても埋めても次々と穴が見つかって、ホント大変でした」とその立ち上げを振り返る。しかし、新型コロナウイルスが吹き荒れ、東京五輪まで延期されたこの時代に、見事新しいリーグを立ち上げてしまった彼にとって、具現化できない夢はあるだろうか。

ビジネス界に身を置いている方こそ、一度は目にすべきコンテンツ、それがD.LEAGUEだろう。


連載:5G×メディア×スポーツの未来
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文=松永裕司

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