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2021.01.21 16:00

開発者に訊く、Google Workspaceの設計を貫く3つのコンセプト。「時間、場所、そして人」

直感的で柔軟性の高い技術であればあるほど、新しい環境に適応することが容易になります。

デジタルワークプレイスの重要性が増すなかで、世界中の企業や組織がコミュニケーション・ツールに関する意思決定を迫られています。それは、将来に大きく影響を及ぼす重大な決断であるといえます。(本記事は米国版Forbesに掲載された、Google CloudのBrandVoiceコンテンツを転載したものです)


COVID-19(新型コロナウイルス感染症)は、デジタルへと移行する速度やその規模を変えただけではありません。私たちが情報を生み出して共有する方法や、同僚やチームとのかかわり方をも変えました。こうした変化は永続的なものであり、この先、潮目が「テレワーク」から「オフィス回帰」に変わっても、現在のデジタルやオンライン環境はなんらかの形でほぼ確実に維持されることでしょう。さらに、こうした環境の変化が今後どのように影響していくのかは誰にもわかりません。それこそ、世界的なパンデミックがいつ終息するのか、誰にもわからないのと同じようにです。

そこで重要になってくるのが、デジタルワークプレイス・ツールの設計を貫くコンセプトを考察することです。メール、チャット、ビデオ会議ツール等を含むオンライン・コラボレーションサービスに何を選択するかは、個人のパフォーマンスを大きく左右する問題であると同時に、おそらく今後数十年にわたって組織の運営に影響を及ぼします。直感的で使いやすく、自由度が高いテクノロジーほど、新しい環境に取り入れるのに適していると言えるでしょう。

人々は、こうしたツールの本質を評価し始めています。それはオンライン生活に適したツールでしょうか? ファイルの種類やバージョン、ベンダーによるロックインに振り回される古い時代からのツールが、オンラインワーク用として使い回されてはいないでしょうか? さらに掘り下げて、こうしたデジタルツールのクリエイターたちは、どんな経験や価値観に従って、根本的なエンジニアリング上の決定を下したのでしょうか? クリエイターたちは、準備期間において何を学び、コラボレーションツールの仕組みにかかわる重要な決断を下したのでしょうか?

このようなエンジニアリング上の決定は、一般の人々にとってはやや難しい問題です。そこで疑問への答えを探るため、最近、Google Workspace(旧称G Suite)のクリエイターに話を訊きました。柔軟性、お客様に選択権を与えること、そして使いやすさを追求することは、言うまでもなく彼らの仕事のあらゆる側面に浸透していました。しかしそれだけではなく、優れたデジタルデザインに共通する奥深い事柄を、彼らから学ぶことができました。それは、人生について最も基本的なこと、すなわち、時間、場所、そして人が最重視されたうえでデザインされている、ということでした。

デジタルワークプレイス・ツールの設計を貫く3つのコンセプトについて、Google Workspaceのクリエイターに訊いた話を以下に紹介します。

1. コラボレーションのしやすさを重視する - 安易に機能を付け加えない


Googleドキュメントの開発はさかのぼること15年以上前、世界的なオンライン化の気運のなかで、ドキュメント作成、コラボレーション、共有のためのツールを開発するというミッションのもと開始されました。しかし、当時、標準的だったワープロソフトに対しては明らかに劣勢でした。

Googleドキュメントの生みの親の一人であり、プロジェクトリーダーでもあったSam Schillaceは、次のように述べています。「古いシステムに継続的に追加されていく多数の機能よりも、利便性やコラボレーション機能のほうが勝る、というのが私たちの理論でした。ブラウザでJavaScriptを利用することで、どこにいても驚くほど簡単に、共有やコラボレーションができるようになりました。利便性とシンプルさこそが優れた基本理論であることが、明らかになったのです。」

初期に顧客から学んだことの一つは、利便性がいかに重要であるかということでした。Schillaceは次のように説明します。「人々は多忙です。生産性と効率を高めてくれるかどうかわからない、不確かなツールのために割く時間などありません。そのため、Googleドキュメントの開発にあたっては、共同作業を簡単に行えるようにするとともに、信頼性を高めるよう心がけました(信頼性を意識せずに作業できることも重要です)。これは、人々を新しいモデルへと向かわせるのに十分なものでした。」


人的ミスはデザインで防ぐ ー 変更内容は自動で保存されるため、右上には「保存」の代わりに「共有」ボタンを配置。チームで「共有」し、同時に作業することで、仕事を素早く片付けられます。


2. プレゼンテーションにどこからでもアクセスできるようにする


プレゼンテーションは、一見そうとはわかりにくいですが、よりソーシャルなコラボレーションが必須となる仕事の一つです。会議の資料として共有されるだけでなく、その作成過程では複数名が関わり、様々な資料を参照しながら多数の修正を加えたりと、多くの人や情報源が関係してきます。だからこそ、どのデバイスからもアクセスできることが重要だと、Googleスライドの初期開発メンバーの一人であるChris Noklebergは述べています。

Noklebergは次のように続けます。「どこからでもアクセスできるのが非常に魅力的な点だと、当初からユーザーに評価されていました。スライドには、多数の図や、グラフ、表など、豊富な情報が詰まっています。これらがすべてブラウザで動作するというのは、まるで魔法のようでした。使用デバイスにかかわらず、何十人ものユーザーが同時にファイルを共有するところを目の当たりにして、私たちは確かな可能性を感じたのです。」

3. 人間の経験ありきの製品開発を行う


Googleはグローバル規模で、かつてない量の情報を整理するという目標を掲げ、数々のテクノロジーを生み出してきました。こうしたテクノロジーが、クラウドコンピューティングや現代のインターネットの基盤となったこともよく知られていることです。一方で、Googleが初期からビデオ会議のヘビーユーザーであったという事実はあまり知られていませんが、この長年のユーザー体験が予想外の洞察と利点を生み、Google Workspaceのビデオ会議サービスであるGoogle Meetの開発方針に繋がりました。

“デジタルの世界で人間性を保つように努めるというのは、重要なことです。”
Daryll Henrich, VP of Engineering, Google

Daryll Henrichは2005年にGoogleに入社した後、サードパーティ製機器を使ったGoogleビデオ会議システムの開発責任者を務めました。Henrichは当時を振り返り、「その頃すでに、ほとんどの打ち合わせをビデオ会議で行っていたのですが、そのコストが非常に高かったのです。」と、格安かつ簡単に誰でも使える社内ソリューションの開発に至った経緯を述べています。

「Googleにとって真のブレークスルーとなったのは、プロダクトやサービスというのは、ハードウェアがどうかという問題ではなく、体験そのものである、と気が付いたことです。会議中、画面の隅に小さな数字で示される3桁の部屋番号のほかに、各自の居場所を知る方法はありませんでしたが、知る必要もなかったのです。私たちは皆、ともに働くGoogle社員だったのですから。」

Henrichは次のように続けます。「ともすればデータドリブンな組織になってしまうところが、このブレークスルーによって、お互いが人として深いところで信頼し合える関係を築くことができたのだと確信しています。Googleが多様性に富むグローバル組織へと急速に成長できたのには、こうした背景があります。デジタルの世界で人間性を保つように努めるというのは、重要なことです。」

もちろん、GoogleのエンジニアがGoogle Workspaceの開発に着手したときから、変わったことも多くあります。しかし、根本的な考え方を大事にする点は、今でも変わっていません。たとえば、Meetのノイズキャンセル機能について発表がありましたが、これは、人々の繋がりをより本物に近づけることを目指したものです。Googleドキュメント、スプレッドシート、スライドの新たなコメント・インターフェースは、チームでの資料作成におけるダイナミズムとコラボレーションを重視して構築されています。オンラインまたはオフラインを示す新しいステータス・インジケーターにより、人々はどこにいても必要な方法で参加できるようになりました。

時間、場所、人。これらの本質的な要素に最大限の自由を与えれば、すばらしいイノベーションを起こせます。将来も通用するテクノロジーを選ぶには、その背後にあるコンセプトをまず考察してみることが重要です。

仕事に必要なツールがすべて揃ったGoogle Workspaceについての詳細は、こちらの記事をご覧ください。


José Pastor ◎Google Workspaceのプロダクト管理担当バイスプレジデント。プロダクトリーダーとしての20年以上の経験を通じ、インパクトのあるプロダクトの開発と、開発チームの構築に情熱を傾けてきた。前職は、RingCentralでプロダクト管理担当シニア・バイスプレジデントを務め、チームを率いて同社の主要プロダクトをエンタープライズ・クラスのソリューションに成長させ、収益を1億ドルから10億ドル超にまで伸ばした実績を持つ。RingCentralの前は、Corrigo, Inc.(後にJLLが買収)でプロダクト管理およびプロダクトマーケティング部門のリーダーを務めていた。キャリアのスタートはBoeingの機械エンジニアだったという経歴の持ち主。Pastorは、ミシガン大学で機械工学の学士号および修士号を取得している。


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