アマゾンによると、「住宅エクイティファンド」と呼ぶファンドを立ち上げ、本社があるワシントン州シアトル近郊のピュージェット湾岸地域、ほかの拠点をかまえるヴァージニア州アーリントンとテネシー州ナッシュヴィルで、パートナーの住宅企業や公的機関、マイノリティ団体など向けに、市場より低い利率のローンや無償資金を提供する。
アマゾンなど大手テック企業のお膝元では、再開発によって高級化が進み、元の住民が住み続けられなくなる問題が起きている。アマゾンがピュージェット地域だけで7万5000人以上を雇っている影響で、シアトルや同市のあるキング郡も低価格住宅の深刻な不足やホームレス危機に見舞われている。2020年の調査によれば、キング郡内のホームレスは1万1000人あまりにのぼっている。
影響には人種の偏りもみられる。黒人はキング郡の人口の7%にとどまるが、郡内のホームレスに占める割合になると25%に跳ね上がる。黒人ほど顕著ではないが、人口比で10%のヒスパニック系も、ホームレスに占める割合は15%となっている。
現地の住宅事情の正常化には多額のコストが必要になりそうなことを踏まえれば、アマゾンの今回の取り組みは不十分と批判することもできるだろう。20億ドルという額は、アマゾンの2020年第3四半期の売上高の2.1%にすぎない。アマゾンはこれまでに、ワシントン州ベルヴューで手ごろな価格の住宅最大1000戸を維持するために、キング郡当局に1億8550万ドルを拠出している。
同様の住宅問題をめぐっては、アップル、フェイスブック、グーグルもそれぞれサンフランシスコのベイエリア向けに10億〜25億ドルの拠出を約束している。
アマゾンによる投資は、遅くても何もやらないよりはましだが、地元住民にとってどれほどの効果があるのかは時間がたたなければわからない。シアトルでは、市も1億1000万ドルを投じて低価格住宅2000戸近くを建設することを明らかにしているほか、近郊のレドモンドに本社を置くマイクロソフトもシアトル大都市圏の住宅問対策に7億5000万ドルの提供を約束している。