コロナ禍のなかで、プラスチックの使用削減問題をどう考えるか

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プラスチックが環境問題、特に海洋汚染につながる可能性があることは、随分以前から指摘されてきた。

古くは1962年、北大西洋のニューファンドランドの海鳥の消化管の中から、プラスチック片が見つかったという研究報告が、このことを示唆する最初の報告であったと言われている。60年も前に、生物への影響という視点から、すでに警鐘が鳴らされていたということだ。

今日、海洋生物がプラスチック(片)を誤って飲み込む事例は、プラスチックの海洋汚染の指標の1つとなっている。現在では、ほぼすべての海鳥、400種以上の魚類、一部の甲殻類、深海生物に至るまで、プラスチックの摂取が報告されているという。

陸上で使った日用品や、海洋で利用された漁具など、人の生活に直結するプラスチック製品が、一見縁遠いと感じる深海に至るまで、拡散しているというのだ。

なかでも2019年11月、英国スコットランドの海岸にマッコウクジラの死骸が打ちあがったニュースには、大きな衝撃があった。

成体で、体長15メートル、体重40トン以上にもなるという巨大なマッコウクジラ(打ちあがった個体は10歳前後とされる)の胃の中に、およそ100キログラムのプラスチックを主とするごみの塊が詰まっていたのだ。死因は、餓死だという。食べ物を取り込み、消化するスペースがなくなるまで、ごみを誤食し続けた結果、最終的に餓死に至ったとみられる。

プラスチックごみを大量に飲み込み死亡したクジラの例は、この年、他の地域からも複数報じられ、プラスチックごみの海洋汚染問題が注目されるきっかけとなった。

コロナ禍で考えられること


このように、多種多様な海洋生物がプラスチックごみ(片)を誤食する事例は数知れず報告されているが、意外なことに、死因をプラスチックの誤食と断定するのは難しいという側面もあるという。

死因を科学的に特定するには、その生物がどれほどの量の異物を摂取すると生命に危険を及ぼすのか、他の疾患を持っていないか、あるいは、他の疾患の影響で異物を摂取するという異常行動を起こしていないかなど、解明すべき点が多い。

しかし、クジラの例や、世界各地、多種多様な生物で、プラスチックごみの摂取が進んでいることは確かだ。悠長に解明を待つのをよしとすることもできないだろう。

また、摂取自体が直接生命に関わらない場合も、プラスチックに含まれる化学物質が体内で溶け出し、蓄積する可能性も示され始めている。魚介類に至っては、食卓に上る可能性もあることを考えると、この「被害」はもう海洋生物だけのものとは言えなくなってくる。
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文=西岡真由美

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