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音楽業界はここ数年、ストリーミングの普及によって収益を伸ばしている。この状況が続けばCDの黄金期に並ぶほどの売上も夢ではないと思われたが、気になる兆候が見え始めている。

音楽業界の幹部は、パンデミックの間にストリーミングの数が急増すると予測したが、実際はその逆だった。ビルボードは先月、「Streaming Is Stalling: Can Music Keep Up in the Attention Economy?(ストリーミングの失速:アテンション・エコノミーの中で音楽業界は維持できるか?)」と題した記事を掲載した。

そこでは、3月のロックダウンの初期の数日間、ストリーミングの楽曲の再生回数が13%の減少になり、週あたりの再生回数が150億回を下回ったことが指摘された。その後の数カ月で再生回数は徐々に回復し、6月の下旬には、以前の水準をやや上回る週あたり175億回に戻ったが、それ以降は頭打ちになっている。

調査企業MIDiA Researchによると、米国のストリーミングの会員数は2020年1月から9月の間に約1100万人増加し、1億1790万人に達したという。会員が増えた一方で、ストリーミングの再生回数は増えていないのだ。

この背景には、複数の要因が挙げられる。在宅勤務が増えた結果、通勤途中の再生回数が減ったというのがその一つだ。さらに、2020年は大統領選挙の影響で、ほとんどのエンタメコンテンツがニュースに消費者の時間を奪われていた。

そして、もう一つの重要な要因が、2019年以降にストリーミングプラットフォームが大々的に購入したポッドキャスト番組が、リスニング時間を伸ばしていることだ。米国のポッドキャストリスナーは1億人以上とされ、平均的なリスナーは6つのポッドキャストを購読し、週に7番組を消費している。

平均的なポッドキャスト番組の長さは約43分で、平均的な楽曲の長さが3分30秒であることから、ポッドキャストは1番組につき、12曲の音楽の再生時間を奪うことになる。つまり週にポッドキャストを7番組聞く場合、84曲分の再生時間が奪われることになる。ここに1億をかけると84億曲になり、週あたりのストリーミングの再生回数の約半分となる。

音楽業界にとってさらに悪いニュースは、2021年には追加で2000万人がポッドキャストのリスナーになると予測されていることだ。今年はさらに約17億再生が、音楽業界から奪われるのかもしれない。

もちろん、ポッドキャストの利用者が全く音楽を聞かない訳ではないため、この試算はあくまでも仮定の話だ。しかし、オーディオコンテンツを消費可能な時間は限られているため、ポッドキャストの台頭で音楽から時間が奪われるのは確実だ。

音楽ビジネスが、これまでのような成長スピードを維持するためには、新たな収益源を確保する必要がある。それが出来ない場合、音楽業界の幹部たちは、苦しい立場に追い込まれそうだ。

編集=上田裕資

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