これは、ビッグテック企業(アマゾン、アップル、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなど)が主導した産業構造の変革に乗り遅れ、従来型の製造業においても世界的な中国へのシフトという大きな潮流を目の当たりにしたことなども大きく影響していると考えられます。
各種統計を見てみても、世界における日本の製造業の競争力が低下していることは明らかなようです。
これには多くの要因があると思いますが、一般的には、台頭してきた新興国で、低コスト生産が実現されたことや、デジタル産業の勃興によって技術を要する複雑な工程を必要としないものづくりが増加したことなどが挙げられます。
デジカメに液晶画面を搭載する大英断
日本の製造業の競争力低下を尻目に、中国は過去20年間、この分野で大きな発展を遂げてきました。そして、中国は単純な製造業から脱却し、より質の高い製造業を目指す「中国製造 2025規画」を提示して、これを国家計画の最重要施策としてロードマップを描いています。中国は今後も製造大国、そして製造強国への道を、国を挙げて邁進していくようです。
中国の製造業は世界銀行の指標によれば、付加価値額すなわち量において世界一となり、「世界の工場」と呼ばれるまでになりました。しかし、質の面ではまだまだ先進国と比べて大きな差があるように感じています。最近では安価で機能が充実した質の高い中国製の製品も見かけるようになりましたが、まだイノベーションの力を感じることはさほどありません。
中国は製造業世界一でありながら、「ものづくり」の国という評価には至っていないのではないかと思います。これは「ものづくり」というコンセプトが、統計など量的な指標のみによるものではなく、定性的で印象によって形成されるものだからだと思います。とはいえ、今後は中国もデジタルテクノロジーに引き続き注力し、「第4次産業革命」へのキャッチアップを進め、「ものづくり」の国への階段を登っていくのではないでしょうか。
日本も先達が築き上げた「ものづくり」の国としての基礎の上に新たな価値を積み重ねて、「ものづくり」の国としての確固たる地位をもう一度取り戻す、そう願うのは、私だけではないはずです。しかし、日本の製品は、家電などで商品力の低下が叫ばれ、欧米の家電売り場では中国や韓国のメーカーのものにとって変わられています。
では、このような状況から抜け出すにはどうしたらいいでしょうか。
商品開発の世界では、市場調査、顧客調査、競合調査などを行い、そしてそれらの調査から導き出されたニーズと社内のシーズ(企業が有する技術やノウハウ)を適合させる手法が一般的かと思います。
しかし、論理的に組み立てられるものは、結局のところ、同じ答えにたどり着いてしまうものです。そして、なかなか差別化ができなくなるというジレンマに陥ってしまいがちです。分析して、ロジカルに組めば組むほど、皆同じような方向に進んでしまうのは必然だと思います。