渡辺直美、40歳からのビジョン
渡辺はこれまでずっと、今後の展望を聞かれると「エンタメで天下取りたい」と答えてきた。芸人としてコメディ映画で主演を務め、映画館でみんなが爆笑するようなものを作りたい。ニューヨークへの移住も、この夢を実現するためだった。40歳頃までにこの夢を実現し、その後も前線でエンタメを続けたい。
しかしキャリアを積むにつれてこんな思いが芽生えるようになった。「40歳になっても私はこれをやれるのかと考えると、ちょっときついな」──。
「エンタメで天下取る」その先は──。
いまのエンタメ業界では、作り込まれた設定で決まったセリフを発する代弁者としての役割しか担えないと感じるようになり、自分がやりたいことや伝えたいこと、表現したいことはしづらいと思うようになった。
「だったら自分がそっち側にいって、いろいろ動かした方が早い。40歳からはエンタメ業界を支える側にいたいなという考えがありますね。プラスして自分がやりたいエンタメをやりたいタイミングで、見せたい人たちに見せられたらいいなと思って」
2020年は特にエンタメのあり方を考えさせられた年だったという。
受け手があらゆるモノやコトを「選択する」時代において、人々が本当に見たいものを提供できているのだろうか。
一方で、コロナ禍にはエンターテイナーとしての幅を広げるポジティブな変化もあった。自粛期間中にYouTubeで生配信などを行ううちに、独学でカメラなど機材の使い方を学んだという。この経験は演じる側としての見せ方を変える大きな成長だった。
2人が考えるクリエイティブ
求められているのは「リアル」
華やかな活躍の裏でストイックな姿勢を貫く渡辺。彼女が今後のエンタメ業界ついて思うこととはなんだろう。
「たぶんこれからは、リアルな人間とリアルな思いと、リアルな言葉しかもう無理だと思います。
テレビ番組などを見ていて、昔のようなお互いのクリエイティブをぶつけ合う時代って90年代で終わったのかなって思っちゃったんですよね。クリエイティブって、生身の人間から出てくるものなので、リアルな人間対リアルな人間でクリエイティブのぶつけ合いをする、それしか残されている方法はないと思います。
ネットフリックスとかでもリアリティーショーが人気だし、ノンフィクションを見ちゃうじゃないですか。結局みんなが求めてるのはリアルだからだと思うんですよ」
「それはどの業界でもそうかもね」と稲木も同意する。