アジア地域における2020年の売上は1.5%減と予測されていたが、2021年には6%成長し、2019年の水準まで持ち直すと期待されている。アジアの急速な回復と輸出需要の伸びが、南アジアにおける国内総生産(GDP)の継続的成長を支え、そこに、2020年11月に15カ国が署名した「地域的な包括的経済連携協定(RCEP)」という追い風が吹く。以下で紹介する、2021年のアジア小売業界をめぐる5つのトレンド及び予測とともに、アジア全域の明るい見通しは達成される見込みだ。
1. M&Aが相次ぐ
ロックダウンが実施されたことで、倒産寸前の企業は増える一方だ。反面、力のある企業やコングロマリットにとっては、将来的な利益を見込んでそうした企業をすくい上げ、自社の事業ポートフォリオを拡大できるという魅力的な見通しが生まれる。
仏高級品大手LVMHが、傘下の英シャツブランド「ピンクシャツメーカー(Pink Shirtmaker)」を閉店して手放すことになったが、複数の紳士服チェーンを展開する中国のトリニティ・グループ(Trinity Group)などライバル企業にとってはちょうどいい買いものだろう。
従って、進化を遂げる業界と、様変わりした消費者行動という課題に取り組めるよう、M&Aがさらに進むと見られる。国内での運営を目的にして競争力の弱い企業が買収されるか、あるいは、戦略的な合併が進むと見られるのだ。
2. 無人店舗の復活
中国では2018年に無人店舗が次々と登場したが、商業的にはあまり成功せず、拡大時と同様の速さで縮小する結果となった。
アマゾンが2020年半ばからスマートショッピングカート「Amazon Dash Cart」の試験導入を開始し、再び主導権を握る一方で、アジアでは、複数の小売企業が無人テクノロジーに改めて力を入れ始めている。たとえば、韓国の携帯電話会社最大手SKテレコムが無人サービスの提供を計画しているほか、日本では宅配ロボットの実証試験が行われている。
パンデミックによって、キャッシュレス決済の利用とソーシャルディスタンスの確保が推奨されるなか、無人店舗テクノロジーも、5Gネットワークの拡大とともに発達しており、買い物自動化の普及を後押ししている。シリコンバレーのスタートアップ「AiFi」は、無人店舗の試験営業をヨーロッパや中国などで実施して成功。2021年にはさらに330店舗のオープンを目指している。