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2021.01.18

バリュー投資を見限るのはまだ早いのか

Photo by Drew Angerer/Getty Images

バリュー株をまとめて購入し、高価な株を空売りすれば、長期的には、市場全体より優れたリターンが平均的に得られる。こうした投資戦略は、「市場の効率性」に対する批評のひとつだった。だがここ数十年、こうした単純なバリュー投資戦略のリターンは縮小してきた。バリュー投資はもはや機能しないのだろうか? 最新の研究によれば、バリュー投資が終焉を迎えたと言うのは時期尚早だ。

バリュープレミアム


ファクター投資の主要な提唱者であるユージン・ファーマとケネス・フレンチがおこなった最近の研究によれば、1963年から2019年までの期間において、バリュー投資のリターンは下半期に急激に低下している。

バリュー投資は基本的に、人気が出るまでは優れたアイディアだった。けれどもすっかり主流となり、実証研究も豊富になった今では、リターンは小さくなっている。もしかすると、バリュー投資の有効性に関する情報自体が、この戦略の天敵なのかもしれない。バリュー投資の取引が増えるにつれて、効果が薄れていくからだ。

見限るのはまだ早い?


しかし、バリュー投資に見切りをつけるのはまだ早いかもしれない。バリュー投資のリターンは歴史的にみて変動が大きいため、その影響を正確に測定するのは、10年スパンであっても困難だ。

というのも、バリュー投資では、ランダムに生じるように見える「リターンの悪化」が一定期間に渡って続く可能性があるうえ、この戦略のリターンは、良い年でも数パーセントでしかない。したがって、優れたリターンでさえもボラティリティによって相殺される可能性があるし、あるいは、不調な10年をたまたま選んでしまう可能性もあるのだ。

例えば2020年には、ある月にS&P500が3分の1近くも下落し、そのあと反発して、約4カ月で元の価格まで回復した。このようなボラティリティの高い状況では、資産価格の小さな変動を見極めるのは困難だ。

このように、統計的分析の結果を読むには注意が必要だが、それでも、1990年代以降のバリュー投資のリターンは、それ以前に比べて大幅に低下しているように見える。

バリュー投資のリターンが、今も投資家が価値を見出せる程度にプラスになっているかどうかは議論が分かれるところだが、過去と比べてかなり小さくなっているようだ。変動の大きな市場で、ある戦略がうまくいかないことを証明するのは、たとえ数年という期間から判断するとしても容易ではない。

一方で、バリュー投資が本当に有効であった証拠も、確実なものとはいえない。バリュー投資の成功を裏付けるデータのほとんどは、1960年代から1980年代にかけてのものだ。この時期のトレンドがいずれ戻るかもしれないが、ここ数十年のバリュー投資のリターンからは、明るい見通しは描けない。

過去の栄光は脇に置くとしても、バリュー投資を信頼するもうひとつの理由は、ベン・グレアムが実証し、さらに偉大な投資家ウォーレン・バフェットが発展させた通り 、この戦略がうまくいくのには信頼できる根拠があることだ。つまり、バリュー投資は単なる統計的データ処理の出力結果ではなく、その効果には論理的なバックボーンがあるのだ。

それでも、かつては複雑で集中的な戦略を通じて実行されてきたバリュー戦略の多くが、いまでは低コストな上場投資信託(ETF)を保有することで実現できることを考えれば、ハードルが下がったことで、バリュー投資家のリターンが薄まった可能性はある。皮肉なことだが、バリュー投資が再び効果を発揮するためには、もっと多くの投資家が愛想をつかす必要があるのかもしれない。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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