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2021.02.08

佐藤可士和が手がける アートとしてのワインエチケット

クリエイティブディレクター 佐藤可士和

2月3日から東京・六本木の国立新美術館で開催されている「佐藤可士和展」。その展示作品の中に、ワインのエチケットを縦1050 mm、横750 mmのB全大サイズに引き伸ばしたシルクリーンのポスターがある。佐藤可士和がブランディングを手がけるニュージーランドのワイナリー「シャトー・ワイマラマ」のエチケットだ。

過去最大規模となる個展に、このエチケットが展示される意味とは。そして、長年様々な広告プロジェクトを手がけてきた佐藤が考える、ブランディングの在り方とは。


シャトー・ワイマラマは、ニュージーランド北島のホークス・ベイにあるワイナリー。ビジネスを通じてかねてより佐藤と親交の深い、実業家の佐藤茂がそのオーナーである。温暖な海洋性気候のホークス・ベイは、フランスのボルドー系品種やローヌ系品種の栽培に最適な土地で、ここでもカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シラーなどをおもに栽培。

2016年からはフランス人醸造家のルドヴィッグ・ヴァネロンをコンサルタントに招聘し、飛躍的な進化を遂げている。ワイナリーのブランディングは佐藤にとっても初めての試みとなった。

ブランディングに最も重要なことは、造り手の理念をいかに汲み取り、ストーリーを構築していくかにあると言う。そこで今回、何か参考にした先例はあったのかと問うと、佐藤は「ない」ときっぱり答えた。

「何かをベンチマークにしてしまうと、それを超えることができません。ブランディングとは社会の中での存在感を戦略的に構築すること。唯一無二のブランドになることが理想です。その業界に王者がいたら、まったく異なる戦略を立てるのが僕のやり方です」

そこで佐藤がシャトー・ワイマラマのブランディングにあたり、まず取り掛かったのはワインのネーミングであった。

「ワイマラマは日本人がオーナーのニュージーランドにあるワイナリーで、フランス系品種でワインを造っています。その中で大切にしたい日本のアイデンティティを表現できるネーミングを考えました」

Minagiwa(みなぎわ)、Emigao(えみがお)、Kiraraka(きららか)……。これらは日本の古語に由来する。

「意味はわからずとも音の響きが心地よく、ワイナリーのストーリーを知れば、情景がまざまざと思い浮かんできます」と、佐藤は言う。

ワイマラマとは、マオリの言葉で「水面に映る月の光」を意味する。ワイナリーのそばを流れるトゥキトゥキ川に反射した月の光だ。Minagiwa=「水際」とはつまり、ブドウ畑が広がるトゥキトゥキ川のほとりのことである。

「ワインは日常の消費財と違ってアートに近いもの。瞬時に多くの人に理解される必要はありません。エチケットやネーミングの意味、ワインの味わいが重なることでひとつのストーリーとなり、造り手の信念も深みを持って人に伝わります」



エチケットのデザインで佐藤が重視したのは、「ワイナリーのフィロソフィーやヴィジョンを最大限表現すること」だ。

「ネーミングと同様に日本らしさを表現しながら、決して和風に陥ることなく、あくまでグローバルに通用するコンテンポラリーなデザインを追求しました」

カリグラフィ風の文字は、既存の書体ではなく佐藤のオリジナル。これを他の文字列と一緒に水平に並べず、斜め上に傾け、やや右に寄せた。一見シンプルだが印象に残るデザイン。ワイン名の上下に残された空間さえも、デザインの一部となっている。

「日本ならではの“間”の取り方ですね。削ぎ落とされた美意識の追求。一種のミニマリズムと言ってもよいでしょう」

シャトー・ワイマラマのMinagiwaやEmigaoも、新世界のボルドーブレンドにありがちな力強さや重厚感をいたずらに追い求めることなく、日本的な繊細さや目に見えない奥行きを表現したワイン。佐藤が考案したネーミングやエチケットは、シャトー・ワイマラマのフィロソフィーを忠実に表している。

そして佐藤可士和展の開催に合わせてリリースされる「Minagiwa」のリミテッド・エディション。



こちらのエチケットは赤地に青と白の直線が縦横に引かれ、従来のワイマラマのエチケットとは大きくデザインコンセプトが異なっている。それもそのはずだ。このエチケットは「佐藤可士和展」開催にあたり、クライアントとのアサイメントから離れた佐藤自身のアートワークのひとつとして作られたスペシャルなもの。つまり、エチケットそれ自体がアートピースなのである。

リミテッド・エディションのエチケットに使用されたテーマ「LINES」について、佐藤はこう語る。


LINES

「子供の頃から“直線”に魅かれていました。直線は自然界に存在し得ない、ひとつの概念でしかありません。しかし、誰の頭の中にもそのイメージは思い浮かぶ。概念なので質量も持たず、劣化もしません。直線について私なりの考察を可視化したアートワークです」

佐藤可士和展では「LINES」と対比する形で、もうひとつのアートワーク「FLOW」も展示される。


FLOW

こちらは幾何学的なLINESと打って変わり、青の岩絵具を含ませた太筆をひと振りして描いた有機的作品。目に見えない自然のエネルギーを動力と重力で表現し、可視化したアートである。

「Minagiwa Reserve Selection 2016 Kashiwa Sato Limited Edition」は、メルロー44%、カベルネ・ソーヴィニヨン27%、シラー15%、マルベック7%、カベルネ・フラン7%というユニークな品種構成。奇しくもフランス人コンサルタントのルドヴィッグ・ヴァネロンが手がけた最初のヴィンテージであり、品質的な精度の向上は言うまでもない。完熟したメルローが水平方向に広がり、骨格を形成するカベルネ・ソーヴィニヨンが垂直の線を結ぶ。

シラー、マルベック、カベルネ・フランはそれぞれスパイスとしての色彩。佐藤可士和の「LINES」と共通した世界観が、ボトルの中に詰められている。


佐藤可士和◎1965年、東京都生まれ。多摩美術大学卒業後、博報堂へ。2000年にクリエイティブスタジオSAMURAIを設立し、代表を務める。企業のロゴデザインやミュージシャンのアートワーク、大学のブランディングに商業施設の空間デザインなど、ディレクションの対象と表現方法は多岐にわたる。日本を代表するクリエイティブディレクター。

佐藤可士和展
2021年2月3日(水)~5月10日(月)国立新美術館にて開催
※日時指定入場制、上記WEBにて事前に要予約



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Promoted by ワイマラマ 文=柳 忠之 人物写真=小田 駿一

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