連邦議会下院は同日、トランプが6日、自らの支持者による暴動を扇動し、5人の死者を出した議事堂乱入事件の発生を招いたとして提出された弾劾決議案を可決した。
決議案には与党・共和党の議員10人も賛成票を投じ(採決の結果は賛成232、反対197)、米史上最も超党派的な弾劾訴追となった。
決議案はそのほか、トランプが大統領選の「結果の認定を妨害する」ため、ジョージア州高官らに対し、同州での自らの勝利に必要な数の票を「見つける」よう要求したことを挙げている。
トランプは「そうした行為によって、在任を許されれば引き続き、彼が(国家の)安全と民主主義、憲法に対する脅威であり続けることを示した」という。
一方、トランプの弾劾を支持するかどうかについて、自身の見解を公に示していない共和党のミッチ・マコネル上院院内総務(ケンタッキー州)は13日、弾劾裁判開始のために上院を予定より早く招集すべきとの民主党の要求には応じない考えを明らかにした。
マコネルは発表文で、「上院が手続きを今週中に開始し、迅速に行動したとしても、トランプ大統領の在任中に評決に至ることはないだろう」「これは私の決断ではなく、事実だ」と述べている。
上院がトランプの弾劾裁判を開始するのは、早くてもジョー・バイデンが新大統領に就任する前日の19日になる見通しだ。
有罪評決は下されるか
弾劾裁判が行われる上院で、民主党が共和党議員からの賛同を得ることはより困難だ。トランプに対する有罪判決を下すためには、民主党議員に加え、最低でも17人の共和党議員の賛成票を得る必要がある。
ただ、上院がトランプに有罪の評決を下せば、議員らはその後、トランプが公職に就く資格をはく奪するための評決を行うことができる。これに必要となる票は、有罪判決に必要な3分の2ではなく、単純過半数となる。
1月6日までの数週間、トランプは大統領選での敗北を認めることを拒否し続け、選挙に不正があったとする根拠のない陰謀論を広め続けた。そして、政治の象徴である議会議事堂に支持者らが乱入する直前、トランプは群衆に向かって次のように演説し、議事堂までの「行進を始めるよう」指示した。
「議会議事堂まで歩いて行き、上院と下院の勇敢な議員たちを激励しよう。だが、おそらく一部の議員たちのことは、それほど応援しない。なぜなら、弱さではわれわれの国を取り戻すことができないからだ。強さを示さなければならない。強くなくてはならない」
トランプはまた、「ここにいるすべての人たちはもうすぐ、自らの声を届けるために平和的に、愛国心をもって、議事堂までの行進を始める」 と述べており、暴力的であってはならないことを示唆していた。だが、それを強く主張していたわけではない。
トランプは記者団に対して12日、この事件に対する自らの責任を全面的に否定。弾劾は「まったくばかげている」と主張している。
民主党は2019年12月にも、トランプが2020年の大統領選に向けて自らの立場を優位にするという政治的意図のもと、バイデン一家に関する調査の実施をウクライナ大統領に強要した「権力乱用」など(ウクライナ疑惑)を理由に、下院に弾劾決議案を提出した。上院はこのとき、弾劾裁判で無罪評決を下している。