「決断に次ぐ決断と走り続けるなかで、無意識に涙があふれていることに気づきました」。レジャー施設予約サイトを運営するアソビューの代表取締役、山野智久はコロナ禍での出来事を、起業してからの10年でいちばん苦しかったと振り返る。
業績に直接影響が出てきたのは、2020年2月の最終週。外出自粛ムードが広がるにつれ、それまで昨対比170%で推移していた流通総額がみるみる下がり、第1回目の緊急事態宣言下の4月と5月には昨対比5%の低水準を記録した。「僕たちがいたのは、コロナ禍におけるど真ん中の業界。毎日更新される、ゼロの数字と向き合いました」。
しかし、どん底だったアソビューは第1回目の緊急事態宣言が解除されてから、徐々に復活を遂げる。2020年6月には、昨対比70%まで回復、2020年8月には232%にしてみせた。なぜ、山野率いるアソビューは見事な復活を遂げることができたのか──。
緊急事態宣言を受け、一時は前年比成長率が5%まで低下。しかし、宣言解除を経て一転、観光業界に客足が戻りきる前にV字回復を見せた。背景には日時・時間指定で在庫管理ができるオンラインチケットサービスの開発があった。
「アソビューの勝因は、群を抜いた決断の速さと、攻めの策、守りの策の両輪をバランスよく回してきたことです」。そう話すのは、グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナーで、アソビュー社外取締役を務める仮屋薗聡一だ。
観光業全体の需要が戻りきらないなか、アソビューだけが業績を伸ばしていた。その理由は、レジャー施設向けの感染拡大防止ガイドラインの策定と「攻め」の施策である、日付と時間指定に対応した、オンラインチケットシステムの存在がある。
第1回目の緊急事態宣言下で、新型コロナウイルスの集団感染に関する報道が加熱し、レジャー施設の営業再開には風評被害のリスクがついて回った。事業者たちの「何をしたらいいのかわからない」という声に応え、山野がまず取り組んだのは、営業再開のために行うべき業務オペレーションを記した感染拡大防止ガイドラインの作成だった。
「ほかに仕事がなかったので、とにかく事業者の課題を解決しようと思いました。仕事ではないので、もちろん無償でした」(山野)
最初に連絡を取ったのは、ハワイ大学で感染症対策などを専門とする実地疫学者の友人。彼の専門知識をレジャー施設の具体的な業務の項目にまで落とし込んだ。次の連携先は、中央省庁だった。観光庁もまた、感染症対策と経済対策を同時に行うという課題を抱えていた。観光庁を通じて、日本の感染症対策を統括する厚生労働省の専門家ともガイドラインのコンセンサスが取れた。
第1回目の宣言が明けて間もない2020年6月初旬にガイドラインを配布したときのことを山野は振り返る。「レジャー施設に『これをやってください』と提示できたことに意義があった。助かったという反響を数多くいただいた」