ポルシェを代表するスポーツカー「911」からは、ビジネススーツを連想する。不思議な関連と思われるだろう。
ビジネスの現場ではスーツが変わった。英国のテーラーだ、イタリアのサルトリアだと言っていた時代から、現代では動きやすい生地のスーツやジャケットにネクタイをしないスタイルへ移った感がある。
ルックス重視の伝統的なスーツは窮屈だ。それより、仕事では気持ちよくいられる服装が欲しい。半ば無意識的に多くの人がそう考えた結果が流れをつくった。
ポルシェ911がなぜ、ずっと愛されているのか。このスポーツカーも、気持ちのよさという、無意識に訴えかける力をもっているからではないかと思っている。
スポーツカーのことを書くとき、排気量やパワー、加速性能についてまっ先に触れてしまう。ポルシェだって、例えば911カレラSは3リッター水平対向6気筒エンジンが450馬力を出力し、静止から時速100kmの加速はわずか3.7秒、と数値で語れるものも多い。
ただしそれがすべてではない。馬力でいえばより上を行く競合車もあるなかで、911が支持され続けているのは、このクルマでしか得られない、絶妙なドライブフィールゆえだろう。
アクセルペダルの踏みこみに敏感な加減速、足と直結するかのような繊細な効き方のブレーキ、そしてステアリングフィール。
路面の状態をていねいにドライバーの手に伝えてくれるうえ、例えばレーンチェンジのときの微妙な車体の動きなど、クルマとの一体感をつくりだすことに長けている。頭で考えるのでなく、体で理解する希有なスポーツカーだ。
自宅勤務が増え、堅苦しいものは虚礼と考える人が増えた。自分が自然に受け入れられるものこそ真の価値をもつ。911カレラSの輝きの理由はそこにある。
Porsche 911 Carrera S
駆動形式|後輪駆動
全長|4519mm
全幅|1852mm
全高|1300mm
最高出力|331kW/450PS
価格|17290000円〜(消費税込み)
問い合わせ|ポルシェコンタクト 0120-846-911
従業員の情熱を喚起するために ポルシェがつくるスマホアプリ
いま企業の課題のひとつは、従業員の仕事へのモチベーションを保ち続けること。ドイツのポルシェ本社では、従業員に、自分の会社のことをより詳しく知ってもらい、ポルシェをつくることに情熱を感じてもらいたいと、スマートフォン用アプリを開発している。「デジタルブランドアカデミー」と名づけられ、3万5000人の従業員の閲覧を前提としたものだ。
「開発の初期段階から、目的は一貫しています。ブランドの知識を伝える“お勉強”アプリでなく、楽しめて、何度も見たいと思えるようなユーザーエクスペリエンスをつくりだすことでした」。ポルシェ本社でブランドマネジメントのディレクターを務めるデニツ・ケズキンはそう語る。従業員向けブランドトレーニングのツールとして非常によくできており、優れたデザインを評価するドイツの「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞している。