全ては「猫様」のために。初の専用装置を開発

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「1秒でも長く一緒にいたい」。加速度センサーと機械学習を駆使して、猫を見守る「Catlog(キャトログ)」を開発したRABOの伊豫愉芸子は、自他共に認める猫好きだ。RABOのオフィスには伊豫の愛猫ブリ丸がCCO(チーフ・キャット・オフィサー)として出勤し、社員の机の上を自由に飛び回る。

Catlogは、重力加速度を感知する首輪型端末で猫の行動を記録。独自に開発したアルゴリズムで行動を分析する。特徴的な波形を拾って「ご飯を食べる」「走る」などのパターンに分類し、その時間や回数を飼い主に携帯のアプリで教えてくれる。排泄量や体重を記録する別の商品と組み合わせれば、人間顔負けの総合的な健康管理も可能だ。すでに約4000匹もの飼い猫がCatlogの「利用者」だ。

日本の飼い猫は約1000万匹。多くが家猫で、9割弱ぐらいの人は猫に留守番をさせている。「猫様を家族のように思っていれば、外出して自分がいないときの猫様の様子が気になります。猫様の平均寿命は約15年で人間の1/5ほど。きちんと健康管理して、1秒でも長く一緒にいたいという人は多い」(伊豫)

伊豫は大学院で動物行動学を専攻し、小型センサーで動物の生態データを集めるバイオロギングの研究をした。リクルートを経て、猫好きが高じて起業。初めてのハードウェア開発は難度が高く、「猫用のIoTなんて作ったことがない」と製造工場に断られたこともあったが、熱意で説得。1年でサービスローンチにこぎ着けた。

猫への熱い思いと繊細な配慮で、ファンを着実に増やしてきた。猫に特化したウェアラブル端末の見守りシステムはおそらく世界初。猫が嫌がらない形や重さを追求した。飼い主からの問い合わせには、猫を飼育しているという採用条件をクリアした、CS(キャット・スペシャリスト)チームがきめ細かに対応する。「大切な存在を大切にすること、それが人間としての心の豊かさ、価値観の幅の広さにつながると私は思っています。それを応援したいんです」。


いよ・ゆきこ◎1981年生まれ、東京都出身。東京海洋大学大学院博士前期課程修了。動物に小型センサーをつけて行動生態を調査するバイオロギングを研究していた。リクルートに入社し新規事業開発などを担当。2018年にRABOを設立。

文=成相通子 写真=帆足宗洋(AVGVST)

この記事は 「Forbes JAPAN No.077 2021年1月号(2020/11/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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