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シェフが繋ぐ食の未来

「ラチュレ」の室田拓人シェフ

『ミシュランガイド東京2021』において、グリーンスターという新しい指標が示されたことをご存知だろうか? サステナブルな食を提供する飲食店の取り組みを評価したもので、絶滅危惧種の保護、環境に配慮した生産者への支援、フードロスの削減などを積極的に行っているレストランが初のグリーンスターに輝いた。

三ツ星では「カンテサンス」「レフェルヴェソンス」、二ツ星で「NARISAWA」「フロリレージュ」、一ツ星で「シンシア」「ラチュレ」の6軒だ。

「ラチュレ」のグリーンスター受賞の理由は、『ミシュランガイド東京2021』に以下のようにある。

「持続的な食の調達を考え、自社菜園を実践。環境に配慮して栽培した野菜は、余すことなく料理に。私たちは食の未来を見据えた社会活動にも取り組み、食育の授業を定期的に行っている」

今回、害獣として社会問題になっているジビエへの取り組みから「ラチュレ」室田拓人シェフにフォーカスして、その活動を追ってみた。

「もともとジビエは素材として好きだったんです」という室田氏は、その扱いに長けていらした『タテルヨシノ』で修業を積んだのち、渋谷『DECO』でジビエに主眼を置き、6年在籍。2016年8月に独立し、ラチュレを開いた。



「狩猟免許を取ったのは9年前のこと。その理由は、タテルヨシノにいた頃に、一つ一つのジビエの個体差や状態の違いに驚き、自分でもハンティングをしてみなければわからないと思ったからです。食べている餌で肉質や旨み分が全く変わる。また、処理の仕方で状態の良し悪しが決まる。雌雄の違いや冬眠前と後の違いなど、さまざまな条件が重なって、肉の状態=価値が決まってくるのだということがよくわかりました」

室田氏はハンターでもあるけれど、店で使用する肉は自身が仕留めたものだけでは足りないので、全国の食肉処理施設に足を運び、条件を満たすところのものを仕入れている。休日はほぼすべてハンティングか施設回り、千葉にある自家菜園の手入れに費やされているというのだから、その情熱には頭が下がる。

全国を回るなかで、農家が鹿や猪から受けている被害に関しても、心を痛めている。鹿が農作物の若芽を根こそぎ食べてしまったり、猪が鼻で畑を掘り起こしたり……。そうした被害は、農家にとっては死活問題だ。

多くの農家は狩猟免許を持ち、ハコワナを仕掛けて鹿や猪をとらえるが、食肉処理施設まで運ぶのに1時間以内でないと食肉として使用できない、と法律で決められている。それを超えると、廃棄せざるを得ないのだ。

また、ハコワナに3頭同時にかかっても、高齢化が進む農家では、3頭を運ぶだけのマンパワーがないのも事実である。現在そうして廃棄されている鹿や猪の肉は、なんと全体の捕獲量の9割以上を占めるという。なんとか正しい形で食用に生かすことができないかと、室田氏は日々考えている。

文=小松宏子

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