同様の観点から、室田氏は小学校での食育の授業も行っている。小さいころからジビエに親しめば、その美味しさが抵抗なく受け入れられるようになり、より広く普及していくはずだと考えるからだ。野菜も、なるべく千葉の自家菜園で採れたものを使用し、無農薬なのはもちろん、食材を運ぶときに排出される二酸化炭素量「フードマイレージ」に配慮していることも教えている。
デザートに“ジビエ”を
レストランで意識していることを聞くと、「プレゼンテーションにすごく気を遣っています」との答えが返ってきた。
もともとジビエ目当ての客ならいざ知らず、思いがけず来店したゲストや女性にジビエを好きになってもらうためにも、あまりに本格的だったり、ハンティングの世界観を前面に出すのではなく、どこかに女性らしさをしのばせた、趣味のいい愛らしさを演出しているのだという。
これから取り組んでいきたいことは、「ジビエの可能性を広げること」だと言う。
「たとえば、僕はジビエでデザートも作っているんですよ。サーターアンダギーを揚げる脂に猪の脂を使用したり、熊の脂でアイスクリームをつくるとか。意外に思うかもしれませんが、自然の甘みがあり、なめらかで実に美味しいんです。また、鹿肉は、カロリー的には鶏のささみくらいしかないのに、赤身で栄養分もミネラルも豊富です。アスリート食としての可能性も追求できるのではと思っています。“美味しい”の先に何があるのかを探っていきたい」
室田シェフの未来は、持続可能な日本の里山の保護とともに広がっている。
連載:シェフが繋ぐ食の未来
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